D:喪明け(笑)。その言葉は知らなかったけど、「売りっぱなしにはするな」というのは言われますね。当たり前のことですけど、債券なら償還期限を迎えたら新しい商品を薦める。ただ、売れなくても別に怒られたりすることはないですね。銀行は特にコンプラに厳しくて、上司が怒鳴り声をあげただけで、コンプラ室に通報されて指導の対象となってしまうので。

B:外国債券や外国株がキャンペーンを打ってくるとき、ノルマがキツくなったりしませんか?

──キャンペーンというと?

B:年1回、1~2カ月間だけ販売手数料を引き下げて営業員に入る奨励金を上乗せするキャンペーンをやる会社もあるんです。お客さんにお得感をアピールできるようにするのと同時に、営業員のやる気を出させて集中的に外債と外株を売るんです。そのときは、積極的に売るようハッパをかけられる。

A:でも、基本的に支店内では投信とファンドラップを販売すると喜ばれますよね。販売手数料が高いから支店の数字に繋がりやすい。

C:ファンドラップも闇が深いですよね……。私が中堅の証券会社でリテール営業を担当していた時には、平気で「高齢者にはファンドラップを売れ」と言う人がいました。最初にお客さんの運用スタイルなどをヒアリングして契約したら、その後は運用担当者の裁量で株や債券、投信などを組み込んで運用できるじゃないですか。認知症になっても、こちらの裁量で運用し続けることができるので、ファンドラップが打ってつけ……ということでした。

D:たぶん、一昔前はそうだったんでしょうね。けど、今はそんな営業は絶対できません。ファンドラップなら、グループ企業の投信を優先的にハメ込むこともできてしまうんですけど、金融庁の目を気にしているのか、むしろグループ内の商品を避ける傾向のほうが強いです。そもそも高齢者に営業するときは、必ず上席者確認が必要なんです。提案する前に上司に確認してもらって、場合によっては上司が直接、お客さんと面談することもある。実は、金融機関が今、一番恐れているのは家族からのクレームなんです。「こんな判断能力がない高齢者にハイリスクの商品を売りつけるなんて!」ってクレームをつけられて、裁判でも起こされたら、ほぼ100%、金融機関は負けるので。だから、75歳以上のお客さんに金融商品を薦める場合には、なるべく家族も同席してもらうようにと言われているほど。

●主婦に人気の外債

──どんな商品が売りやすい?

A:主婦の方に鉄板なのはトルコリラ建てやブラジルレアル建ての債券ですね。為替リスクがあると説明しても、高い利回りと「債券」という響きだけで、好んで購入される方が多いです。

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