北尾吉孝(きたお・よしたか)/1951年、兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部、英国ケンブリッジ大学卒業。95年、ソフトバンク入社、常務取締役などを経て現職(写真部・小原雄輝)
北尾吉孝(きたお・よしたか)/1951年、兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部、英国ケンブリッジ大学卒業。95年、ソフトバンク入社、常務取締役などを経て現職(写真部・小原雄輝)

 世の中に浸透する一方で、「非科学的」と眉をひそめる人も多い「占い」。しかし、個人の選択肢が増えすぎ、経験則が必ずしも通用しない現在、「信じる」「信じない」ではない「占い」とのつきあい方があるという――。AERA10月2日号では、「占い」を大特集。金融やマーケティング、カウンセリングなどの世界で「占い」がどう活かされているかを探り、現代社会における「占い」のあり方を多角的に取材した。

 毎年発表される「年頭所感」が大きな話題になるSBIホールディングス代表の北尾吉孝さん。中高生の頃から中国の古典に親しんできたという。

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「易学」を経営に生かす。そう言うと古代の人たちがやっていたことをそのまま想像する人もいるかもしれません。亀の甲羅の割れ方などで判断を決めていたように経営をしていると。

「易学」とはそういう占いではなく、そもそも一種の予知学というか、学問なのです。ですから他の学問と同じように、いろいろな判断のプラスになることがありえるということです。

 長い歴史に裏打ちされ、ある意味で一つの統計データとして練られてきたので、間違いでしょうとも一概には言えないと思います。

 2011年1月、私が率いるSBIホールディングスの「年頭所感」が話題になりました。その年は「辛卯」の年でした。字義を解釈すれば「これまで蓄積してきたエネルギーにより、大がかりな新陳代謝を進め、閉塞を打ち破り、新たな発展へ向かう年」になります。

 過去をさかのぼると、辛卯の年には、自然災害など天変地異の異常、予期せぬ出来事が起きやすいことが分かりました。「特に注意すべきは地震です」。これを「所感」で述べ、まさに3月に東日本大震災が起こったわけです。
データとして念頭に

 大事なことは、当たるか当たらないかではなく、一つのデータとして念頭に置いておきましょう、ということなのです。

 易、易経の知識は中学、高校のころから安岡正篤先生の本を何度も読んだりするなかで、頭の中で体系的に整理されていきました。また運命について考え始めたりするなかで関心が深まりました。

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