国連の経済制裁が進む北朝鮮の経済や国民生活はどうなっているのか(※写真はイメージ)
国連の経済制裁が進む北朝鮮の経済や国民生活はどうなっているのか(※写真はイメージ)
平壌市内の高級イタリア料理店でピザを作る女性店員。外貨を多く持つ人や外国人を対象に市場価格を設定して営業しているとみられる(写真:gettyimages)
平壌市内の高級イタリア料理店でピザを作る女性店員。外貨を多く持つ人や外国人を対象に市場価格を設定して営業しているとみられる(写真:gettyimages)

 日本列島を越えて弾道ミサイルをどんどん発射し、米国相手に挑発を繰り返す北朝鮮。国連の経済制裁が進む中で、経済や国民生活はどうなっているのか。

【写真】高級イタリア料理店でピザを作る女性店員

 北朝鮮・平壌で人気の「ケーキ店」があるという。店舗を構えているわけではない。住宅街に立ち並ぶ、なんの変哲もないアパートの一室。看板も掲げずに「営業」している。それと知って行けば、「住人」の女性から、おいしいケーキが買える。その店はXアパートのY号室にあるそうだ──。これが「とっておきの話」として人から人へと口コミで伝わり、有名になった。環日本海経済研究所の三村光弘・主任研究員は、実際に行ったことはないが、こう想像する。

「きっと、料理が上手なセミプロ集団が雇われてケーキを作っているのだと思います」

 社会主義計画経済を掲げる北朝鮮では、人を雇うことは資本主義の「搾取」を意味する罪深い行為のはずだ。しかし、

「すべて取り締まると国民生活に影響があるので、お目こぼしをしたのでしょう」(三村さん)

 こうして民間資本の食品や衣服といった小売業が育ちつつある。それが原材料を売買する卸売業につながった。市場の周辺にあるアパートには原材料を保管する倉庫業。国営企業や軍のトラックを借りて配送する運送業。地方都市を結ぶ物流網も整備されてきたという。市場経済が根づいた。

●GDPは福井県並み

 北朝鮮は1990年代半ば、3年続けて洪水や干ばつに見舞われ、農作物が壊滅的な被害を受けた。国の配給制度は機能しなくなり、闇市場が生まれた。その結果、地方政府が2003年、公設市場を設けるに至った。国営企業に対しても、計画生産よりも収益を重視する方針に切り替わった。つまり、農民にも国営企業にも自活を求めた。市場には商品が集まったが、オモテの収入だけでは手が出ず、ウラの収入を探す。夫は低賃金のまま働き、妻が市場で小売業を営む共働きが主流だという。三村さんが現地の人に詳細を尋ねると、「人の数だけウラの稼ぎ方がある」。冒頭の「ケーキ店」もウラの稼ぎ方といえる。

 日本から見ると、国際的に孤立し、貧しいという印象が強いが、北朝鮮と国交を結ぶ国は164カ国に達する。国交がない米国、日本、フランス、イスラエルなどはむしろ少数派だ。

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