小池百合子都知事 (c)朝日新聞社
小池百合子都知事 (c)朝日新聞社

 小池百合子都知事が「希望の党」結成を発表してから1週間で、日本の景色は変わった。作家・北原みのりさんが抱いた違和感とは。

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 希望の党のPR動画、率直に言って怖いです。

 登場するのは小池さんを思わせる緑色のスーツに身を包んだ女性。「歯向かう気か」というテロップの後には腕を組んだりタバコをくわえたりして女性を批判するスーツ姿の男性2人。女性は彼らに一瞥をくれることなく颯爽と歩き続けます。

 古い体質の「組織」や「オヤジ」vs.小池さんという演出で、女性の支持を集める狙いなのでしょう。でも、こういう状況に苦しんできた者としては、「えっ、素通り? 闘わなくていいの?」と。痛みや葛藤を共有してくれている感じがしないんです。

 極め付きは、「ただ耐えるか、みんなで変えるか」と訴える女性の後ろについていく4人が、全員男性だということ。希望の党の政策には「女性活躍」もありましたが、うっかり忘れちゃったんでしょうか。小池百合子という政治家は本当に男性のほうだけを向いて仕事をしているんだな、と思いました。

 動画では、小池さんらしき女性は一度も振り返りませんが、現在の混乱を見ていると、後ろを振り向いたときの「ヤバい」という表情が想像できます。だって小池さんと新党を立ち上げた議員って風を読むのがうまいだけで、優秀とは思えない。

 この解散は安倍首相の「国難突破解散」を皮肉って「ボク難解散」とも言われていますが、個人的には元民進党の山尾志桜里前議員の不倫疑惑報道から発展した「不倫解散」だと思っています。不倫から始まった選挙なんだからドロ沼になるしかない。錯綜する情報にいちいち絶望しているとムダに消耗します。重視する政策は何か。それを地道にやってくれる候補者は誰か。雰囲気に惑わされず、過去の発言や著書をチェックするなどして冷静に見極めたいですね。

(構成/編集部・竹下郁子)

AERA 2017年10月9日号