日銀もわかっていた。このころ緩和規模を縮小、つまり「出口」を模索し始めたようだ。「アベノミクスに付き合えない」。そんな声が現場から上がり、執行部を翻意させたという。「執行部はメンツもあって方針転換が難しい。でも職員は日銀の存続が大事」(別の関係者)

●「攻め」から「守り」に

「出口」が姿をみせたのは16年9月の新たな緩和だ。長期金利がゼロ%程度になるように国債を買う。買い入れ額は「めど」で目標から「格下げ」。お金の量を追うのは「放棄した。政権との関係もあって明言できないけども」(前出のOB)。

 国債保有の増加は15年度の79.4兆円に対して、16年度は68.5兆円。日銀は「攻め」から「守り」に軸足を移したと受け止められた。物価目標達成の先送りも6度に及び、黒田総裁の任期中(18年4月まで)の達成をあきらめた。今後、方針転換の印象を薄めるには「操作対象を2、3年の短い金利にする」(木内氏)、「強いコミットメント(公約)を打ち出す」(クレディ・スイス証券の白川浩道副会長)などの見方がある。

 米国では今年9月20日、FRB(連邦準備制度理事会)が10月から緩和で増えた資産を減らすと決めた。日本の「出口」が再び脚光を浴びる。そこに、また衆院選がめぐってきた。安倍首相は今回、消費税を前面に据え、金融緩和への言及は目立たない。「このまま平穏にやり過ごせるかもしれない」。前出の幹部は希望を抱く。「出口」からどう進むのか。後任総裁に託された。

(編集委員・江畠俊彦)

AERA 2017年10月9日号