10年満期の商品なので、途中解約には解約料がとられる。しかも、1豪ドル=100円を超えていたときに購入。だが、円高が進み始め、このまま満期を迎えると受取額は減る計算だ。

 受取額は投資信託で運用する変額部分と、最初に払い込んだ保険料と同額が外貨建てで最低保証される部分がある。

「そう聞くと元本が保証されると勘違いされる人が多いのですが、運用期間中に円高が進むと受取額は減ってしまう。解約料を取られるので、お金が必要なときに自由に換金できないといったリスクがあります」(カン氏)

「運用利回りは1.2%」「最低保証があります」「満期になったら年金形式で受け取れます」と言われ、この男性は「定期預金と比較してお得」と思ってしまったという。

 家電製品などを買うときは、比較サイトなどで商品をよく吟味する人がほとんどだが、金融商品になると、販売員の営業トークの前に思考停止してしまう、そういう人が多いという。主な理由は、金融商品の仕組みが複雑であることと、商品の数が多いことにある。

●全投資信託の約2%

 投資信託協会によると、投信の銘柄数は6千本以上。株式市場に上場する会社が約3500社ということを考えると、その選択肢の多さは圧倒的だ。だが、金融庁は個人投資家との意見交換会の資料などで「既存の投資信託の大半は、長期の積立・分散投資による資産形成に不向き」としている。

 では、初心者にとって資産形成はどのようにすればいいのか。そのヒントになりそうなのが、18年1月1日から始まる「つみたてNISA」だ。

 最長20年間、年40万円までの投資の運用益が非課税になる。対象となる投信は、仕組みが分かりやすくて販売手数料が無料などと厳しい条件で絞られた120本だ。すべての投資信託の約2%しか対象にならないため、業界からの反発が必至とみられていたが、ここに来て長期マネーの取り込みに動く金融機関も増え始めた。(ライター・村田くみ)

AERA 2017年10月9日号