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ウサイン・ボルト 9秒台より大切なこと

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遠田寛生AERA

 世界最速の男、ウサイン・ボルトが9月25日発売(10月2日号)のアエラ表紙に登場した。「競走なのだから目標は勝つことだ。10秒10でも勝てればいい」

 世界選手権で現役を引退。個人で手にした金メダルは五輪6個、世界選手権7個にのぼる。だが、人類最速の男がこだわったのは記録よりも勝利だった。

*  *  *
 9月9日、東洋大学の桐生祥秀が陸上の男子100メートルで9秒98。日本新記録を樹立した。日本人の前に立ちはだかっていた「10秒の壁」を初めて打ち破った。偶然にも数日前、世界最速の男は京都で日本選手の「可能性は十分」と予言めいた発言をしていた。

 100メートル9秒58、200メートル19秒19の世界記録を持つ。195センチの体を揺らしたゆったりとした走りが特徴だ。出遅れてもぐんぐんと加速して他を抜き去り、優勝する。10秒と20秒に満たないレースで、数々のドラマを生んできた。

 世界記録更新は常に目標にしていたが、タイムに固執していたわけではない。「勝っていれば10秒を切っていなくても問題ない。勝てなくて、10秒を切れていなかったら、一生懸命10秒を切る努力をしなければならない」

 史上最速でありながら、最強の努力の人でもあるのだ。

 人気の理由はトラックの外にもあった。レース後は観客とハイタッチし、記念撮影に応じる。記者会見では誤解を恐れず、感じたままに発言する。あの弓を引くポーズは世界中に浸透し、旅行先では見知らぬ人から「この人でしょ?」とポーズで確認されると笑う。

 こうと決めたことはやり遂げる。インタビュー前、はしを器用に使って焼きそばや春巻きを食べる姿があった。2007年の大阪世界選手権で来日した際に「覚えよう」と決め、いまに至るという。

 生まれ変わるなら「サッカー選手」。母国に帰れば、週に2日は友人らとサッカーにいそしむ。世界選手権で故障した左太もも裏が完治したら、

「いろいろな球団のトライアル(入団テスト)を受けるかもしれない」

 これから始めようと思っているのは「釣り」。100分の1秒を争ってきた世界とは対極の趣味で、のんびり待つ時間を味わうのだろうか。(朝日新聞スポーツ部/遠田寛生)

AERA 2017年10月2日号


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