陸上100メートル9秒台に挑戦する日本人 壁の向こうには「風に乗る」感覚 (2/6) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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陸上100メートル9秒台に挑戦する日本人 壁の向こうには「風に乗る」感覚

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高野祐太AERA
9秒98の歴史的日本記録を示す電光掲示板の横でポーズを取る桐生祥秀(東洋大)。高校3年で10秒01を出してから4年半の苦節を乗り越えた達成感を物語るような晴れやかな笑顔だ (c)朝日新聞社

9秒98の歴史的日本記録を示す電光掲示板の横でポーズを取る桐生祥秀(東洋大)。高校3年で10秒01を出してから4年半の苦節を乗り越えた達成感を物語るような晴れやかな笑顔だ (c)朝日新聞社

桐生が日本新を記録したレースの判定写真。1000分の1秒間隔のスリットで判定される。桐生は9秒98、2位の多田修平は10秒07のスリットでゴールを通過(写真:日本学生陸上競技連合提供)

桐生が日本新を記録したレースの判定写真。1000分の1秒間隔のスリットで判定される。桐生は9秒98、2位の多田修平は10秒07のスリットでゴールを通過(写真:日本学生陸上競技連合提供)

 もう1人、城西大城西高2年だった15年に世界ユース選手権で短距離2種目大会新の2冠、同年の世界選手権200メートルに史上最年少出場して準決勝進出のサニブラウン・アブデルハキーム(東京陸協)は、米国・フロリダ大への9月の入学を控えて1月からオランダで修業を積んでいた。

 5月21日に川崎市で行われた国際大会の前日会見。すらりと手足の長い188センチの18歳が、いまどきのキャップをかぶり登場した。記者との質疑応答が始まった、そのときのことだ。

「海外で学んだ“技術”をお見せしたい」

 落ち着き払った様子でサニブラウンはそう語り、ニヤリとほくそ笑んだ。質問はすぐに次の話題へと移り、さらっと聞き流された雰囲気だったが、筆者には「技術」というフレーズが頭に引っかかっていた。そして、この意味深な発言が、どれだけの威力を持っていたのかが後になって明らかになる。

 サニブラウンは、6月の日本選手権で戦前の予想を覆して短距離2冠を果たすと、8月の世界選手権ではその走りが世界でも通用することを堂々と宣言してみせたのだ。

●柔らかく重心移動して走る 新たな走りに確かな手応え

 その走りの成長ぶりは驚くべきものだった。高校時代の粗削りなフォームが見違えるように改善されていた。蹴った足が後ろに流れることはなく、力みのない動作から極めて滑らかに重心が乗り込んでいく。半年間に受けたオランダでの特訓によって、「9秒台を出すための条件を満たした走り」(動作技術に精通した青山学院大の安井年文コーチ)に変貌していたのだった。

 史上最年少で200メートルの決勝に進出し7位に入賞したのだが、それよりも圧巻は100メートル予選の走りだった。スタートとともに軽やかなステップを踏むと、中盤以降も柔らかい重心移動でリードした。


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