石川県が誇る一対の雉香炉(県立美術館蔵) (写真:石川県立美術館提供)
石川県が誇る一対の雉香炉(県立美術館蔵) (写真:石川県立美術館提供)

「断捨離」と言われても、なかなかモノが捨てられない。だが、インターネットのおかげで、実家の片づけや引っ越しで出るガラクタにも値がつく時代に。訪日する中国人が、家の片隅に置かれた中国骨董に高値をつけ、メルカリでどんどん遺品整理もできる。タンスの中は、宝の山だ。AERA 2017年9月25日号では「お宝流出時代」を大特集。

 長い歴史を重ね、戦火にも耐えてこの国のかたちを今に伝えてくれる各地の文化財。今回は都道府県の文化財保護担当者に、郷土のイチ押し宝物を紹介してもらった。

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 1983年に開館し、石川県ゆかりの作品など3600件の美術工芸品を展示する石川県立美術館。その「第1展示室」には、江戸時代の著名な作陶家・野々村仁清(にんせい)が作った二つの雉(きじ)の香炉「色絵雉香炉」(国宝)、「色絵雌雉香炉」(重要文化財)が展示されている。「雉香炉」は極彩色、「雌」は後ろを振り向いて毛づくろいをしている。

「雉香炉」は加賀藩前田家の藩主が家臣に与えたという伝承があり、58年に県内の名家から寄贈された。それから約30年後、東京のある大企業経営者夫人から「雌」の寄贈の申し出があった。

「自分の孫が結婚するので、この香炉も結婚させてほしい、というのです」(美術館担当者)
 制作から300年以上の時を経て再会した二つの香炉に敬意を表し、同美術館は専用の展示室を設けることにした。
「石川県の『本尊』ともいえる存在です」(同)

●石川は熱いエピソード

 文化財保護法で、歴史上価値の高い建造物や絵画、彫刻、工芸品、古文書などを「有形文化財」、そのうち建造物以外のものを「美術工芸品」と呼んでいる。いわば行政お墨付きの“お宝”だ。国が指定する重要な有形文化財が「重要文化財(重文)」(1万3128件)、そのうちさらに重要なものが「国宝」(1101件)となる(数字は9月1日現在)。これ以外にも都道府県や市町村が指定・選定する文化財が多数存在する。

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福井洋平

福井洋平

2001年朝日新聞社に入社。週刊朝日、青森総局、AERA、AERAムック教育、ジュニア編集部などを経て2023年「あさがくナビ」編集長に就任。「就活ニュースペーパー」で就活生の役に立つ情報を発信中。

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