2歳と4歳の子を持つ宮代千香子さん(36)は大学院卒。高校で教えていたが、夫の転勤に伴って退職。働きたいと思っても、求職中の身で保育所に子どもを預けることは叶わず、働けずにいた。いまは週に3~4日、長子が幼稚園に行っている間にママスクエアで勤務する。時給940円。一般のコールセンターの相場より安いが、それ以上のものがあると言う。

「子どもが病気になったときは休んでいいと言われていて。その安心感は大きいです」

 キッズサポートスタッフも子どもを持つ親だ。元保育士の佐藤舞さん(28)は病院内の託児施設で働いていた。24時間365日稼働の職場で、出産後も働き続けることは難しかった。

「保育士を続けるには娘を保育所に入れないといけない。フルタイムが前提になり、またパート勤務では収入が娘の保育料に消えてしまいます。その点、ママスクエアは子どもも預けられ、託児費も1日300円ですむので、お金もきちんと手元に残ります」

●企業主導育児にしない

 ママスクエアでは「働きたいのに働けていない子育て中の主婦は全国に150万人以上いる」と見ている。

 待機児童問題解消の突破口として政府は民間に期待をかけるが、「見落としてはいけない視点がある」という人がいた。
「保育園を考える親の会」代表の普光院(ふこういん)亜紀さんだ。

 保育所は、子どもの利益を代弁する役割も果たしてきた。保育時間の融通がきかなかったとしても、それによって子どもたちが守られてきた側面もある。企業が保育所を設置することで、社員が言われるままに働かされ、子どもにも過重なしわ寄せがいくことは、避けなければならない。

「企業内保育所の拡充が“企業主導型育児”につながってはいけないのです」(普光院さん)

(編集部・作田裕史、石田かおる)

AERA 2017年9月18日号

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