●大学入試にも役立つ

 子どもには最良の教育環境を与えたい。地元の公立中学に進学して高校受験を目指し内申点を取るほうが、共働き家庭には大変そう。そんな思いが、どんどん財布のひもを緩ませる。

 お金だけではない。親たちを最も悩ませるのは、仕事とのバランスだ。江東区在住でメーカー勤務の女性(45)は、会社からの「管理職になれプレッシャー」に悩む。

 夫は単身赴任中だが、長女(16)に続き、小5の次女も中学受験の準備中だ。

「中学受験に親のエゴがゼロだとは言いませんが、9割は子どもの豊かな人生への投資だと思っています」

 長女とおなじ進学校を狙いつつ「ダンスも続けたい」という次女のために、社会は自宅で女性が教えることにして塾に通う日を減らし、ダンスに通う時間を捻出している。

 女性自身は、これから受験までの1年半は仕事量を抑えたいと考えているが、会社はそれを許してくれない。管理職になるための研修への参加を促されるたび、逃げ回っているという。

「子どもにとって一度きりの中学受験を支えられなかったら、一生後悔すると思う。いまはそう割り切って、受験に向き合いたいのに」

 子どもを支えたいと思いつつ、思う存分、仕事もしたいという葛藤を抱える親も多い。

 千代田区で官僚として働く女性(50)も半年ほど前、小6になる長女の受験を見据えて上司に業務の軽減を相談した。返ってきたのは「つまらない仕事ばかりになることを覚悟して」という言葉。落ち込んだが、なぜか異動先は海外出張もある部署だった。やりがいは申し分ない。でも、受験のフォローは十分にできない。

 それでも受験はさせる、とこの女性。

「娘はしっかり者で、夏休みも一人で頑張れた。それに万一失敗しても、中学受験の勉強は、大学入試などで活用できる内容だと確信しました」

 実際、中学受験はその後の人生にプラスだという経験者の声は少なくない。渋谷区に住む共働きの男性(43)もこう話す。

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