北朝鮮は初めて通常の角度で中距離ミサイルを撃ち出し、重力で自然落下させようとしました。しかし、最終段階のデータは収集していないはずです。ミサイルが発する信号を受ける船を、日本列島を通り越して太平洋に展開できないからです。どう改善していいか検討できず、命中精度を上げるのは困難でしょう。兵器としては致命的です。

 もっとも、ロケットとしては正確に打ち上げられると判断できます。火星14を7月28日に発射し、ロケットの1段目、2段目が正常に動くことを確認したと考えています。通常よりも発射角度を上げるロフテッド軌道だったようですから、宇宙空間から大気圏に再突入する際の断熱圧縮も大きくなります。再突入失敗とみられるのも当然です。米国の技術でも無理でしょう。「落下速度が上がって迎撃が難しい」といった懸念は無用です。

 命中精度や信頼性を脇に置けば、北朝鮮が「米本土に届くICBMが完成した」と主張できるのは数年後でしょうか。

 北朝鮮は今回の核実験後、電磁パルス攻撃にも言及しました。核爆弾を大気圏より上の宇宙空間で爆発させて電磁波を発生させ、軍の指揮系統などを混乱させるものです。しかし、雷と同じ影響しかありません。日本では落雷を察知すると自動的にブレーカーを落とす機器が普及しています。問題ないでしょう。

 一方、米トランプ政権は軍事対応も辞さないとしていますが、米軍は国際法を厳格に守り、人道に対する脅威や自衛権の行使以外には動きません。動けば全面戦争。北朝鮮は日本にノドンを数発撃ち込むかもしれませんが、海上自衛隊のイージス艦に搭載された迎撃ミサイル「SM3」で撃ち落とせるはずです。

 北朝鮮は今年4月、軍事パレードでICBMに見える機体を公開しました。ハリボテだと思いますが、「将来必ず完成させる」という強い意志表示です。

(構成/編集部・江畠俊彦)

AERA 2017年9月18日