「それがボブのすごいところだよ。僕は一緒に出かけるのが楽しくて仕方なかった。ボブ自身も地下鉄やバスを楽しんでいて、自分のお気に入りの席がある。毎日地下鉄に乗って“出勤”していたから、職員が特別にボブにパスを発行してくれたんだ」

 ボブを肩に乗せた彼の姿はたちまち評判になり、YouTubeにアップされた動画は世界中で再生された。それまで「誰にも関心を示されず、存在しないに等しかった」路上演奏者が、ボブをきっかけに人と関わるようになったのだ。

「なによりボブと出会ったことで、僕には責任感が生まれた。ボブの面倒を見るためには、まず自分の面倒を見なければならない。自分が健康にならなければ、ってね」

 ジェームズは壮絶な禁断症状に耐え、ついに薬物依存を克服。2012年に自身の体験を本に綴り、続編2冊を合わせると世界で累計1千万部の大ベストセラーとなった。本をもとに映画「ボブという名の 幸せのハイタッチ」が製作され、8月26日から日本でも公開中だ。ボブ役を演じているのはボブ本人。映画のプレミア会場でキャサリン妃とも対面し、夢中にさせた。

●ロンドンにも猫カフェ

 いっぽう日本は空前の猫ブーム。彼らはこの状況を知っているのだろうか?

「もちろん! 猫の駅長“たま”も知っているよ。でも亡くなってしまったんだよね。猫を飼っている相撲部屋があると聞いて、行ってみたいと思っていた。明日、そこに行くんだ。ネットで世界の猫がどう暮らしているかを見るのは楽しいよ」
 イギリスにも猫好きは多いが「日本人の情熱にはとても及ばない」と笑う。

「ロンドンには猫カフェが一つくらいしかないしね。でもボブといると、みんなが笑顔で話しかけてくる。ボブは人に喜びをもたらしてくれる存在なんだ。気難しくなく、いつもハッピーなオーラをまとっていてそれが人にも伝わるんだと思う。ボブが僕を正しい道に導いてくれた。でもそのほかにも支援団体や手を差し伸べてくれる人がいたから、僕はどん底から立ち直ることができたんだ」

次のページ