北朝鮮のミサイル発射とJアラート稼働を伝える各局のテレビ画面 (c)朝日新聞社
北朝鮮のミサイル発射とJアラート稼働を伝える各局のテレビ画面 (c)朝日新聞社
北朝鮮のミサイル(AERA 2017年9月11日号より)
北朝鮮のミサイル(AERA 2017年9月11日号より)

 北朝鮮ミサイルの北海道越え、Jアラートが12道県に早朝目覚めの悪い、北朝鮮ミサイルの北海道越え。初めて本格稼働したJアラートの不気味な鳴動音は、ミサイル防衛の強化へとつながる。

【北朝鮮が保持しているミサイルと飛行距離】

「政府としてはミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握しており、国民の生命を守るために万全の態勢を取ってきました」

 8月29日、北朝鮮が中距離弾道ミサイルを発射、それが北海道南部、約500キロの上空を通って襟裳岬東方1180キロの太平洋に落下して間もなく、記者団に対して安倍晋三首相はほぼ冒頭から得意げにこの話を始めた。

 全国瞬時警報システム「Jアラート」が事実上初めて機能したからうれしかったのだろう。この受信機がほぼすべての自治体に設置され、運用開始となったのは2011年6月だが、今回以前にJアラートの警報が出たのは12年12月と16年2月、北朝鮮が「テポドン2」で人工衛星を打ち上げた際の2回だけだった。この時は北朝鮮が事前に発射の時間帯や場所、予定軌道の通告をしていたから、1回目は発射の6分後、2回目は4分後にJアラートが情報を流した。それ以外の度重なるミサイル発射実験の場合は予告がなかったから情報の把握が遅れ、警報を出しても落下の後になって、恥をさらすだけだからJアラートは使われなかった。

●警報から着弾まで4分

 今回の「火星12」らしき中距離ミサイル発射の際は、午前5時58分に発射、4分後の6時2分にJアラートが情報を流した。北朝鮮から日本の目標を狙って弾道ミサイルが発射されれば8分ほどで落下するから約4分の差がある。その間に地下室や防空壕に逃げ込めれば生存率は高まる。

 だが早く警報を出そうとすれば、まだミサイルがどこに向かっているのかはっきりしない段階で警報を出すから、警報の対象地域は広くならざるを得ない。今回の対象地域は北海道から長野県までの12道県、全長約1200キロに達し、ほぼ日本列島の北半分だった。

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