上野達弘早稲田大学法学学術院教授。知的財産法が専門。自身も幼少からチェロを演奏する(写真:本人提供)
上野達弘早稲田大学法学学術院教授。知的財産法が専門。自身も幼少からチェロを演奏する(写真:本人提供)

 何やら聴き慣れぬ音色が近づいてくる。奏者の姿は見えない。正体は、新たな展開をみせているAI(人工知能)。人間と協調して演奏し、わずか数十秒で作曲もするとか。AERA 9月4日号ではAI時代の音楽を見通すアーティストや動きを大特集。人間と音楽、そしてAIのトリオが奏でる曲とは、一体何か――。

*  *  *

 曲調やイメージ、テンポを選んで、決定ボタンを押すだけ。ものの数十秒で、好みの曲が出来上がる。そんなAIを活用した自動作曲ソフトが、今やインターネット上で複数公開されている。ただ、もし仮にとんでもない名作がこのソフトから生み出され、「世に発表したい」となった場合、楽曲の権利は誰のものになるのだろうか。曲調やテンポを選んだ人? AI?

 AIの活用が進むにつれ、こうした「AI制作物」の知的財産に関する議論が、専門家やメーカー関係者の間で盛んになされるようになってきた。自動作曲ソフトを提供する、ある企業の担当者が話す。

「今は著作権フリーで利用してもらっているが、『商業利用したい』と言ってきた人がいた場合に権利をどうするのか、社内ではまだはっきりとした整理はついていない。近い将来、問題になってくるのでは……」

次のページ