ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 アエラのお盆休みの週、アメリカはグチャグチャになっておりました。米東部シャーロッツビルでの白人至上主義者と反対派の衝突事件に対し、8月15日にトランプ大統領が「双方に非がある」と発言。メディアのみならず、共和党内部からも非難囂々となり、これだけでも大騒ぎだったのですが、18日にはなんと、スティーブン・バノン大統領首席戦略官が辞任(事実上の解任)してしまいました。

 彼はトランプを思想的に支えてきた人物。フリン、スパイサー、プリーバス、スカラムーチといった要職が次々に解雇されてきた上にバノンとなるともう、トランプ大統領がホワイトハウスのマネジメントができていないと言われても仕方ありません。

 実際には、影の将軍として権力を示しつつあるケリーが首席補佐官というポストに入ってきたときに、どうやら、その引き換えにバノンを切るという約束があったようです。ケリーは元海兵隊大将。アメリカでMarine(海兵隊)出身者は大変な尊敬を集めますが、その大将となればすさまじい地位があります。過去、トランプ大統領からの首席補佐官のオファーを何度も断っており、なぜ最終的に受けたかと言えば、やはりアメリカという国のために忠誠を尽くすという軍人としてのプライドがあったことと、バノン解任という条件をトランプ大統領がのんだという話には十分に説得力があります。

 当然、軍人つながりであるいわゆるMMT(マクマスター、マティス、ティラーソン)に対しては強烈なシンパシーを持っていることは間違いありません。特にマクマスターとは長年の盟友関係にあり、激しく激突していたバノンとマクマスターの関係を見れば、バノンを解任するというのは実は自然な流れです。

 ということで、全く終わる気配のない「トランプ劇場」ですが、結局はMMT、及びグローバリストと呼ばれるグループが主導権を握りつつあり、「アメリカファースト」を叫んでいたトランプ人脈と言われる人たちは「切腹」させられた感があります。西郷隆盛的な役割を果たし(不満分子を連れて切腹してしまった)、共和党の伝統的政治手法(軍人、グローバリスト、多国籍企業が中心)に戻ってくるという当初の予想が当たりそうな気がします。恐るべし、トランプ劇場!!

AERA 2017年9月4日号

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