山崎:大変でしたね。私の場合は、子どもがよく寝るタイプで、私はもともとショートスリーパー、そして夫がかなり育児をするので、そのきつさを知りません。正直なところ、育児は楽しいことばかりです。エッセーにはそれを率直につづりました。
ヨシタケ:家庭によって、本当にそれぞれですからね。
山崎:育児を「大変」「ツライ」と定義する声があまりにも多いので、「全員がそうではない」と伝えることに、社会的な意義があるのでは、と考えました。
ヨシタケ:大変な人ほどだれかに聞いてもらいたいと思うので、声が大きくなってしまうところはあるのかもしれませんね。
●晴れ舞台は夫に譲る
山崎:ヨシタケさんは「父親の疎外感」についても書いています。子どもと接する時間が短くなってしまうほうの親には、長く接するほうの親がフォローしないといけない、と省みました。
ヨシタケ:子どもができた途端「夫の格下げ」が起きることは、よく言われてきたことです。ずっと自分を見ていてくれた妻が見てくれなくなる。自分よりも大事な人ができて、そのサポートの役割も担わされる。そこに一抹の寂しさがあるのです。
山崎:私の家の場合は、夫は私の「サポート」をしません。夫は主体性を持って育児に臨んでいます。だから私も、夫を部下やアルバイトのように扱うのではなく、責任者同士としてかかわることを心掛けています。
ヨシタケ:これ、山崎さんの本を読んでいて、ズキッと来た部分です。夫も子育てに主体的にかかわれということですよね。
山崎:それぞれの家のやり方だと思うんですけど。うちは、友だちと会う際、夫が抱っこして「子育てやってますアピール」をしています。記念写真、お宮参りなど子育ての晴れ舞台の中心は夫に譲りました。私のほうが長時間子どもと接して日々育児を楽しませてもらっているので。
ヨシタケ:それは山崎さんの優しさですよね。
山崎:夫が妻をサポートするかたちで育児をしていらっしゃるご家庭もあると思います。それももちろん素敵です。私は、いろいろなかかわり方があっていいよね、と言いたいんです。
ヨシタケ:選択肢を増やしていくことは大事です。