岡田:秀吉には狂気があるんですよ。これまで何度も仕えてきたのでわかります(笑)。人たらしというか、いいところもあり、もちろん悪いところもある。笑ってるんだけど怖い。家臣役としては「怖さ」のほうを感じてしまう。ぶっきらぼうに言っているんだけど、「ハッ」とひれ伏したくなる怖さ。滝藤さんの秀吉には特にしっかり、それを感じました。

 念願だった原田監督の作品で滝藤さんと共演できて、役所さんもいて、あの「関ヶ原」を撮ることができた。スタッフにも、「俺たち、『関ヶ原』を撮ってるんだ!」みたいな熱があって。東本願寺や姫路城といった「本物の場所」も力を貸してくれた。質感を大事に時代劇を作ることができたのは、うれしかったですね。

滝藤:岡田さんとご一緒できたことは大きかった。岡田さんが馬に乗る姿を見て乗馬を始めたくらいですから。身のこなしもね。最初に有村架純さんを抱きかかえるように倒したシーンを見て、鳥肌が立ちました。あんなこと、その場で教えられてもすぐにはできないでしょう? 常日頃の鍛錬ですよね。

岡田:動きをつけられたことって、あまりないんですよ。有村さんとのシーンもそうです。カメラの位置が決まって、あとは「どちらに倒すのがいいですか? 安全なほうですよね」と。

滝藤:すごい……。体の接触ってすごく難しいでしょ。僕は以前、女優さんを抱きかかえてキスするシーンで「痛い痛い痛いっ」て言われたことがありましたから(笑)。体のどこを密着させてどこに手を添えて、というのはとても大事。岡田さんは何もかもが美しかった。

岡田:ありがとうございます。

●家康は大企業の社長

滝藤:「SCOOP!」という映画を撮っていたときに、現場にいらした原田監督にオファーをいただいたんですが、そのとき「馬にも乗れませんし立ち回りもできません」ってお答えしたんです。原田監督は「何だよ、もういいよ」と行きかけたんですが、すぐ戻っていらして、「馬も立ち回りもない役があるから」って(笑)。現場で岡田さんの所作を見て、時代劇がやりたい、一から勉強したいと思いました。

岡田:「関ヶ原の戦い」ってよく、大企業の派閥争いに例えられたりもしますよね。周囲に自分の感情をなかなか見せない家康のタヌキな感じは、大企業の社長みたいな感じ(笑)。映画では、シビアな人物たちがシビアに動いていますから、歴史好きな方はもちろん、ビジネスパーソンのみなさんにも、楽しんでもらえる作品になったと思いますよ。

(構成/フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2017年8月28日号