岡田:原田監督はとにかく情報を詰め込んでいて、脚本がものすごく厚かった。せりふとせりふの間の「……」は、前のせりふを聞きながら演じなさい、と。リアクションしながらそこを詰めて話したんです。

滝藤:僕は「クライマーズ・ハイ」以来約10年ぶりの原田組。わかってはいたんですけど、相変わらずせりふのテンポが速かったですね。岡田さんが殿様で僕が家来のようでした(笑)。もう浮足立っちゃって。

岡田:そんなふうには見えませんでしたけど。滝藤さんはどんどん秀吉に入っていかれた。東本願寺でのシーンも、特殊メイクをしたらもう、入り込んでいらっしゃいましたよね。よだれを垂らして演じていましたもん(笑)。とても話しかけられなかった。

滝藤:岡田さんの三成が義を尽くしてくれたからです。

●関ヶ原を撮ってるんだ

岡田:秀吉がやろうとしていたことには間違いもたくさんあった。でも、三成は秀吉に本当に恩を感じていて、彼を大事にしたいという気持ちがある。その気持ちが、三成が純粋と言われる「核」でもあると思ってました。それなのに、秀吉が死んだあと、見送りもできなかった。

滝藤:あのシーンは泣けた。

岡田:台本には「哀れだと思った」くらいしか書いていなかったんですが、僕は泣くことを選んだ。武将が泣くのもどうか、とは思ったんですが、これほどの天下人が寂しく送られていくシーンを「哀れだと思った」というだけではどうか、と思って。滝藤さん演じる秀吉だから、余計に愛を感じたんです。よだれを拭いてあげたくなっちゃうんです(笑)。

 原田監督はそういう細かいところも絶対撮ってくれますからね。三成の愛情みたいなものを表現するのにふさわしいシーンだと思いました。滝藤さんの秀吉は、爆発力があり余る感じだったので、それに乗っていけばよかったんです。

滝藤:僕の秀吉は仲代達矢さんがモデルです。ひょうきんでかわいげがある半面、寂しさとか弱さとか、抱えているものがとても深い。そして、何より底知れぬ怖さがある。こんなこと言っていいのかな(笑)。

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