●小規模が最大の魅力

 強みは何なのか。心理福祉学科4年の横澤要さん(22)はこう話す。

「小規模であることが最大の魅力。ゼミは4人程度で、先生との距離も近く、個々の考えや意見もきちんと聞いてくれます」

 ほかに2人の学生に話を聞いたが、皆が「小規模であることが魅力」と口を揃えた。石岡宏美キャリアセンター長は言う。

「各学科にキャリアの専任職員を置き、個別ですべての学生の相談にあたっている。職員は皆、学生の顔を覚えており、名前で呼び合っています」

 明治薬科大学に続き「小規模」というキーワードが出たが、「延滞率がゼロの大学」はどこも小規模の大学ばかりだった。

 ならば学生数が1万人以上の「低『延滞率』ランキング」はどうだろう。採用コンサルティング会社「人材研究所」の曽和利光代表は上位に地方の国立大学が並ぶ点に注目する。

「今は大卒就職は全国的に売り手市場だが、特に人材が大学進学で都市部に流出する地方のほうが、地元に残った優秀な人材の激しい奪い合いになる」

 ランキングのトップは岡山大学(岡山市)。結果に対し、学生総合支援センター副センター長の坂入信也教授(キャリア形成)は「学生の資質」と謙遜するが、興味深いのはキャリア支援の一環として「部活」に力を入れていることだ。都市部の有名私大ではスポーツ推薦枠の学生が一定数在籍し、一般の学生が活躍しづらい面もある。同大では学生の半分、サークルも入れると7割が部活動に参加しているという。

 坂入教授はこう話す。

「部活動は縦の関係を学べるうえ、他学部の学生との交流もできる。いまだ企業から文武両道の人材の評価は高い。そうしたことを伝え、意識的に部活動に入るように仕掛けています」

 坂入教授は今回の結果に関し「大学の名前を背負って活動することで責任感も芽生え、それが低い延滞率につながっているかもしれない」と付け加えた。

 私大のトップは名城大学(名古屋市)。名古屋はモノづくり企業の集積地で、地元意識が強い。学生のうち愛知県出身者が約65%で、約9割は東海4県の出身者。卒業生の約8割は地元で就職する。吉久光一学長は名城の強みをこう話す。
●文理に幅広い求人

「名城は9学部23学科を持つ、中部地方最大級の学生数を誇る大学です。文系に特化した大学や、理系に特化した大学はあるが、中部地方で本学のような文理総合の学びを提供できる大学は少ない。幅広い学びから巣立った19万人を超える卒業生が様々な業界で活躍している」

 理系の企業であっても、文系の営業職が必要だし、文系の企業にとっても、専門知識のある理系人材が必要だ。文系理系双方の学部があるため、同校を訪問する企業は幅広い。名古屋には南山大学などほかに有名私大はあるが、いずれも文系学部が中心だ。キャリアセンターの犬飼斉事務部長は言う。

「たとえば文系の金融業界の景気が悪くても、理系のメーカーの求人でカバーできる。逆もまたしかり。ほかの業界でカバーできるのがうちの強みです」

●就職先の満足度高い

 今春の卒業生の就職率は99.7%。経営学部4年の山口直也さん(21)は、親身なキャリア支援も魅力だと話す。

「1年次からそれぞれに進路担当の職員が割り振られる。困ったときに相談できる人がいることはとても心強い」

 都内の有名私大では慶應大学がトップになったが、MARCHでは立教大学(豊島区)がトップだ。今や立教の看板学部となった経営学部が、受験業界に異変を起こしている。「進学レーダー」編集長の井上修さんは、

「早稲田の商学部や慶應の商学部と偏差値で並び“早慶上立”なんて言葉も生まれている。特に女子学生に人気があり、優秀な学生が集まってきている」

 かつては内部進学者の第1希望は社会学部や経済学部だったが、今では経営学部だという。

 就職支援も手厚い。キャリアセンターの市川珠美課長は、

「企業を訪問するスタディーツアーなども1年生から始め、社会を知ることに取り組みます。昨春の卒業生対象のアンケートでは、93.9%が就職先に大変満足、または満足と答えています」

 希望する会社に入社できれば離職率も減り、奨学金の返還が延滞することもないだろう。

 オープンキャンパスも終盤戦を迎えた。低延滞率大学から見えてきたいくつかのキーワード。進路選択の指標になるのでは。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2017年8月28日号