低「延滞率」ランキング(平均以下で学生数1万人以上の大学限定)/※延滞率は日本学生支援機構「学校毎の貸与及び返還に関する情報」から、2015年度末時点で過去5年間に奨学金貸与が終了したもののうち、3カ月以上延滞している学生の割合を算出した(AERA 2017年8月28日号より)
低「延滞率」ランキング(平均以下で学生数1万人以上の大学限定)/※延滞率は日本学生支援機構「学校毎の貸与及び返還に関する情報」から、2015年度末時点で過去5年間に奨学金貸与が終了したもののうち、3カ月以上延滞している学生の割合を算出した(AERA 2017年8月28日号より)
奨学金「延滞率」0%の大学/「延滞率」は、分母を2014年度末までの5年間に返還義務が生じた貸与終了者、分子を2015年度末時点で3カ月以上延滞しているものとして算出。学生数は2015年度日本学生支援機構「学校毎の貸与及び返還に関する情報」を元にアエラ編集部が集計(AERA 2017年8月28日号より)
奨学金「延滞率」0%の大学/「延滞率」は、分母を2014年度末までの5年間に返還義務が生じた貸与終了者、分子を2015年度末時点で3カ月以上延滞しているものとして算出。学生数は2015年度日本学生支援機構「学校毎の貸与及び返還に関する情報」を元にアエラ編集部が集計(AERA 2017年8月28日号より)
大学生の2人に1人が奨学金を利用(AERA 2017年8月28日号より)
大学生の2人に1人が奨学金を利用(AERA 2017年8月28日号より)
仙台白百合女子大学/同大は、熱心なカトリック信者で6月に現役を引退した棋士の加藤一二三・九段(77)が客員教授に就任したことでも話題になった(撮影/編集部・澤田晃宏)
仙台白百合女子大学/同大は、熱心なカトリック信者で6月に現役を引退した棋士の加藤一二三・九段(77)が客員教授に就任したことでも話題になった(撮影/編集部・澤田晃宏)
名城大学/2016年4月にナゴヤドーム前キャンパスを完成させ、9学部目の外国語学部を新設した。ジャーナリストの池上彰氏が教授に就任(撮影/編集部・澤田晃宏)
名城大学/2016年4月にナゴヤドーム前キャンパスを完成させ、9学部目の外国語学部を新設した。ジャーナリストの池上彰氏が教授に就任(撮影/編集部・澤田晃宏)

 オープンキャンパス真っ盛りのこの季節。最近では親同伴で学内を回る姿も珍しくない。教育環境や入試倍率、学費もそうだが、“出口”の就職率なども気になるところ。AERA 8月28日号で、コスパのいい進学先を調べてみた。

【図表】奨学金「延滞率」0%の大学はこちら

 日本学生支援機構が各大学の奨学金延滞率のデータベースを公表した。5%を超える大学もあるなか、0%の大学もあった。低延滞率を誇る大学には就職力を超えたキーワードがあった。

*  *  *

 大学生の2人に1人が奨学金を借りている。彼らが生まれた約20年前は5人に1人程度。この間、給与所得者の平均給与は1997年の467万円をピークに2015年には420万円に。これと比例するように10万円以上の仕送りを受ける大学生は同期間で63%から31%に。ネガティブな数字を挙げればきりがない。

 大学生の8割が利用する日本学生支援機構の奨学金を例にとると、最大月額12万円の第2種奨学金を4年間借りれば、月額3万2297円の返済が20年間も続く。延滞者も出てくる。日本学生支援機構の調査によれば、延滞が始まった理由のトップは「家計の収入が減った」(76.1%)、延滞が継続している理由は「本人の低所得」(67.2%)だ。大学卒業後の職の不安定さが影響しているのは間違いない。

 今回アエラでは、日本学生支援機構が公開しているデータをもとに「延滞率がゼロの大学」に加え、学生数が1万人以上で、平均延滞率1.3%台以下の大学を対象に「低『延滞率』ランキング」を作成した。奨学金を「返すことができる大学」に何か秘密はあるのか。

 情報非公開の大学を含め749校中、「延滞率がゼロの大学」は40校。そのうちの一つ、明治薬科大学(東京都清瀬市)を訪ねた。小山清隆副学長はデータの結果を見て、こう話した。

「大半が医療関係の大学だ。医療業界は全体的に人手不足。逆を言えば、就職もいい」

●卒業率に注目する

 同校は薬学部のみの単科大学で、薬剤師を養成する6年制の薬学科と、約7割が大学院に進学する薬学のスペシャリストを育てる生命創薬科学科がある。薬剤師の国家試験の合格実績は平均を大きく上回る94%(17年)。病院や薬局を中心に、就職率は5年連続で95%以上だ。小山副学長は「歴史」と「小規模」の二つのキーワードを挙げた。

「1902年の創学以来、3万5千人を超える卒業生が様々な現場で活躍しており、医療機関からの信頼が厚い。小規模だから就職支援もマンツーマンでできる。さらには卒業生の同窓会組織“明薬会”が毎年、同窓会主催の就職支援フォーラムを実施する。学生は『福利厚生はどうなのですか?』なんてリアルな質問もすることができ、就職後のミスマッチも防げている」

 民間企業に就職する学生もいるが、薬剤師の求人倍率は10倍を超え、全国どこででも職にありつける手堅い職業だ。滞納を防ぐ背景に、安定した資格があることは間違いない。

 ただ、「大学ランキング」編集統括で教育ジャーナリストの小林哲夫さんはこう指摘する。

「医科、歯科、薬科などの大学は、もともと学費が高く、支払う能力のある家庭の子どもが中心。奨学金を利用する学生はそれほど多くはないだろう」

 コストパフォーマンスの点で小林さんは「標準修業年限卒業率(卒業率)」に注目する。大学を4年間で、医学部や薬学部なら6年間で卒業する率を指す。

「高度な資格試験浪人や留学のためなど、一概に4年で卒業できる大学がいいわけではないが、留年など落ちこぼれを防いでいる“面倒見のいい大学”と見ることもできる」(小林さん)

 そうした点で見ると「延滞率がゼロの大学」に入る仙台白百合女子大学(仙台市)は興味深い。大学ランキングの調査によれば、卒業率はランキング上位の94.8%だ。東北唯一のカトリック大学で、東京の白百合女子大学(調布市)と同じ経営母体。お嬢様学校かと思いきや、約6割の学生が奨学金を利用しているという。人間学部のみの単科大学で、保育士や幼稚園教諭としての就職を目指す人間発達学科など資格取得に力を入れているが、民間企業への就職者も多い。偏差値は決して高くなく、定員割れも起こしている。

次のページ