●教授が放課後補習

 同学部4年の古賀大騎さんは、大学進学者が少ない高校の出身だ。放送通信関係の仕事につき、女手一つで育ててくれている母を楽にさせたいと同大に進学。入学して驚いたのは、サポートの手厚さだったという。

就職にも有利になる無線関係の資格を取ろうとした時、教授が放課後、何度も補習してくださいました。難関でしたがおかげで合格でき、学内で表彰されて3万円の報奨金まで出た。それで受験料を払い、次の資格取得の教材も買えました。応援されるから頑張ろうと思えました」

 古賀さんは念願かなって、来年からはNHKの技術職として一歩を踏み出す。

●アルバイト先に出向く

 福工大と対照的に、地元志向が強いのが福井大学(福井市)だ。同大は国立大学のなかでここ10年、実就職率のトップを独走。さらに大卒後3年以内の離職率が全国平均31.9%に対して、福井大は9.2%と極めて低い。その背景についてキャリア支援室の大橋祐之室長はこう話す。

「福井県は幸福度が全国1位。県内に進学した学生は地元で満足し、あまり外に出ない。人口あたりの社長の割合も全国1位で、規模は大きくなくても、優良な企業が多くあります」

 国立大としては珍しく10年以上前からキャリア支援を充実させてきた。各学科から1人ずつ教員を出して就職委員会を結成。入学から3年生までは4~5人の学生に対し1人の教員がついてさまざまな相談に乗る。4年生は卒業研究担当の教員が引き継ぐ。なかなか連絡の取れない学生とコンタクトするため、深夜にアルバイト先のコンビニに出向いたこともあるという。

 一方、キャリア支援室のスタッフは企業へこまめに足を運び、時にはPRが苦手な中小企業に、どのように発信すれば今の学生に伝わるのかもアドバイスする。企業説明会では、学生と企業の担当者がより密接に話ができるよう1社に絞った個別説明会も開く。長期休みには、県内外の企業を訪問するバスツアーも開催する。3年生を対象にした就職ガイダンスは年に60回以上。「ぶっちゃけトーク」など若者ウケするタイトルで動員を図る。

 教育地域科学部(16年度から教育学部と国際地域学部に再編)の4年生で、福井県出身の女子学生は第1志望の地元の金融機関から内定を得た。

「個別と合同、合わせて6回説明会に参加しました。公務員から志望を変えたので十分な準備ができていなかったのですが、支援室のスタッフがいろいろと相談に乗ってくれて、精神的にも助けられました」

 教育地域科学部は県の公立学校教員、市役所のほか、福井信用金庫など地元金融機関への就職が多い。工学部の学生は最近は福井県出身より東海地区出身が増えている。

 特に愛知県の学生はUターン志向が強く、自動車関係をはじめ愛知県企業とのパイプを太くして実績を上げている。そのほかアイシン・エィ・ダブリュ、JR西日本、大林組などへも就職している。就職委員長の葛生伸教授は言う。

「学生とは、教職員の誰かが必ずつながっています。就職率100%とはいきませんが、学生は100%把握しています」

(編集部/石臥薫子、ライター/柿崎明子)

AERA 2017年8月28日号