●初期コストの低さが鍵

 キャンピングカーは国土交通省が定める構造要件を満たせば、特種車両「キャンピング車」として8ナンバーがつき、高速道路料金が(よほどの大型車両でない限り)普通車扱いとなる、などのメリットがある。その半面、コンロや給排水設備などを備える必要があるが、そうしたコストはそのまま価格にも跳ね返る。

 コンビニやスーパーも充実した日本では、車内で調理する人はむしろ少数派。「快適に寝られればいい」と、設備を最小限に絞ることで価格を抑え、室内空間を広く使える「8ナンバー以外」が人気なのは、こうした日本独特の使い方があるためだ。

 一方、メディアでもたまに話題になる「軽キャンピングカー」は、小型・軽量・低価格で安定した人気を誇り、2年連続で生産台数は1千台を超えている。

「夫婦旅を楽しむシニア層や、乳幼児連れのヤングファミリーに支持されていますが、シニア夫婦に孫ができたり、若い夫婦も子どもが成長するなどして、より大きいサイズへの買い替えにつながれば、と期待している分野でもあります」(矢久保さん)

●使い方もより多彩に

 ユーザー側の使い道も多様化が進んでいるという。「朝日新聞デジタル &M」に「キャンピングカーで行こう!」を連載するキャンピングカージャーナリストの渡部竜生さん(53)はキャンピングカー=アウトドアというイメージはもはや古い、と断言する。

アイドル歌手の『追っかけ』にレンタルキャンピングカーを利用する女性たちもいるそうです。人気男性グループの公演ともなれば周辺ホテルは争奪戦。ファン仲間同士、割り勘でキャンピングカーを借りるらしい」

 渡部さん自身、以前はもっぱら趣味のバイクレースのサーキット通いにキャンピングカーを利用していたという。

「自転車レースの地方遠征に使っている友人もいます。高価なレース用車両も車内で保管できて、ゆっくり体を休めることもできる、と喜んでますね」

 実際、JRVA発表の「キャンピングカー白書2016」を見ても、ユーザーがよく利用する宿泊場所は、1位・道の駅、2位・高速道路のSAやPA。キャンプ場は3位だ。

「道の駅や高速道路のSA・PAは公共施設で、あくまで仮眠のためのもの。マナーの悪い利用者がいれば『キャンピングカーお断り』と、排除されてしまうことさえある。そのため、協会としても愛用者人口の増加を受けて宿泊インフラの拡張整備が急務なんです」(前出の矢久保さん)

 JRVAでは5年前から、道の駅や商業施設の駐車場に電源付きで長期滞在もできる「RVパーク」設置を推進。24時間利用できるトイレがあり、近隣に入浴施設やシャワーがある、ゴミの処理ができるなどの好条件で、1泊およそ2千~3千円(入浴は別料金)。今夏にはその件数が100件を突破するという。

「そのほか、JRVAとは別会社でユーザー団体の『くるま旅クラブ』会員向けには、温泉旅館やホテルなどの駐車場を借りて宿泊する『湯YOUパーク』も全国に130件ほどあります。今後も粘り強く、増やしていきたい」(同)

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