【左】横山だいすけ(よこやま・だいすけ)/1983年、千葉県生まれ。国立音楽大学声楽科卒業。劇団四季を経て、2008年4月から9年間、NHK「おかあさんといっしょ」11代目「うたのお兄さん」。【右】西村義明(にしむら・よしあき)/1977年、東京都生まれ。スタジオジブリで高畑勲監督「かぐや姫の物語」や米林宏昌監督「思い出のマーニー」をプロデュース。2015年にスタジオポノックを設立し、最新作「メアリと魔女の花」が7月8日から全国で公開(撮影/今村拓馬)
【左】横山だいすけ(よこやま・だいすけ)/1983年、千葉県生まれ。国立音楽大学声楽科卒業。劇団四季を経て、2008年4月から9年間、NHK「おかあさんといっしょ」11代目「うたのお兄さん」。
【右】西村義明(にしむら・よしあき)/1977年、東京都生まれ。スタジオジブリで高畑勲監督「かぐや姫の物語」や米林宏昌監督「思い出のマーニー」をプロデュース。2015年にスタジオポノックを設立し、最新作「メアリと魔女の花」が7月8日から全国で公開(撮影/今村拓馬)
思い出の絵本の1冊に「娘が描いた『にんじんさん、へんしん』」を挙げた西村義明さん。「人参が大根を食べて『ポン』でたぬきに、『ポン』できつねに、ポンポンと全然違うものに変化する。傑作です」(撮影/今村拓馬)
思い出の絵本の1冊に「娘が描いた『にんじんさん、へんしん』」を挙げた西村義明さん。「人参が大根を食べて『ポン』でたぬきに、『ポン』できつねに、ポンポンと全然違うものに変化する。傑作です」(撮影/今村拓馬)

「おかあさんといっしょ」11代目うたのお兄さん、横山だいすけさんと 映画「メアリと魔女の花」 プロデューサー、西村義明さん特別対談が実現。子育て実用誌『AERA with Baby スペシャル保存版 早期教育、いつから始めますか?』からお届けします。

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 ドイツの児童文学『飛ぶ教室』が大好きという一点で一気に意気投合したという二人の対談が実現した。テーマは本。子どもを楽しませるプロが、子どもの好奇心を伸ばすために大人が奪ってはいけないことについて語ります。

西村義明:電子書籍が増えていますけど、子どもには、近くに本が雑然と置かれている環境をつくってあげたい。うちは意識的に、食卓の後ろに本棚を作って、絵本や児童文学をずらっと置いてるんですよ。子どもから見るとパパの後ろに本がいっぱい並んでる。小さいころ「これ読んでいいの?」って聞かれたら、「まだダメ。字が読めるようになったらね。でもこれ面白いんだぜ」って話してました。すごく読みたそうにしていて、5歳ぐらいのとき、長女が本をあさっているのを見つけたんです。「よしっ!」と思いました。

●初めてのゲルニカは

横山だいすけ:本当にそうですよね。僕は小さいころ、うちの母親と散歩するといっつも本屋に連れて行かれて。ときどき「今日はこれ買ってみよっか」って言ってくれるのがうれしかった。たくさんの中から選んだ一冊はどんな本だろうってワクワクして。いろんな本を読みたいと思うきっかけになりました。

西村:絵本や本は、本当は与えちゃいけないと思うんですよね。いまは音楽でも映像でも世の中にあふれて、最初の出会いが奪われている。好奇心が生まれにくい時代だと思うんですよ。

 僕が10年ぐらい一緒に仕事をしていた高畑勲監督は「知の巨人」と言われる人ですが、その好奇心や知識の根源は欠乏から生まれたと思うんです。高畑さんが子どもの頃、お父さんが毎月1枚だけレコードを買ってきて、そっと蓄音機に置く。そのスピーカーから流れてくる西洋音楽の調べに「なんだこの音楽は?」って驚いたそうです。

 高畑監督への羨望を込めて言ったことがあります。「僕らはピカソも北斎もゴーギャンも教科書で見ました。高畑さんは美術館で見ましたよね。クラシック音楽との出会いはレコード。でも僕らはカフェのBGMです。僕らと高畑さんではファーストコンタクトが違う」と。僕らはモーツァルトだって聞きすぎて、クラシックが流れているな、くらいの感覚になりがちなんです。

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