絶叫とともに、「ボコッ」という音も衝撃的だった。元秘書は「殴られた左頬はまだ違和感が残る」と語る。豊田氏に望むのは、「早く公の場で、自分で説明してほしい」(撮影/写真部・小山幸佑)
絶叫とともに、「ボコッ」という音も衝撃的だった。元秘書は「殴られた左頬はまだ違和感が残る」と語る。豊田氏に望むのは、「早く公の場で、自分で説明してほしい」(撮影/写真部・小山幸佑)

 東京都議選で自民惨敗に“貢献”したとも言われた豊田真由子衆院議員の秘書への暴言・暴行。政治家秘書の置かれたブラックな実態を知らせたいと、元秘書が口を開いた。

「このハゲーーー!」「お前なんて生きてる価値ないだろ。死ねば」──。

 度肝を抜かれた自民党の豊田真由子衆院議員(42、埼玉4区)の政策担当秘書への暴言・暴行疑惑。週刊新潮が一報し、音声データも公開されると、豊田議員は離党届の提出に追い込まれた。一方で、元秘書の男性(50代)には「嫌なら辞めればいい」「ミスが多すぎる」などのバッシングが起こった。今回、この元秘書が「単なる内輪もめととらえてほしくない。議員秘書の現状を知らせたい」と、豊田事務所での過酷な3カ月を振り返った。

 豊田氏は2012年初当選時、「役所の時、睡眠2時間で生きてきた」と豪語。関係者によると、秘書やスタッフの出入りが激しく、2月、3月に政策秘書が相次いで辞め、後任を探していたという。元秘書が豊田氏に初めて会ったのは3月30日。東京・永田町の議員会館で「どぶ板に徹し、選挙区をかけずり回っている」と話す豊田氏に、元秘書は「仕事師の雰囲気を感じた」。

 元秘書は6年前までの11年間、計3人の国会議員に政策秘書として仕えた。その後、永田町を離れ、都内で公益団体の運営に関わっていた。

●刺されるかもしれない

 豊田氏に「お試しで」と言われ、翌4月から本業が休みの週末、地元選挙区の埼玉県新座市の事務所を手伝い始めた。時給や労働時間の提示はなかった。豊田氏の地元回りは多い日で1日10カ所以上。支持者訪問やお祭り、会合……。お付きの秘書は車の運転にとどまらず、豊田氏のスピーチや支持者から出た要望や質問を記録。写真も撮り、SNSに上げる。人員が少ない割に膨大な作業量だった。

 豊田氏に何日か同行し、怒りっぽい点は感じた。「お前らみたいな底辺のような人間」との言葉には引っかかったが、それでも豊田氏のことを「1カ所でも多く回ろうと常に駆け足、熱心で偉い」と感じていた。

 政策秘書への登録に応じた5月17日からわずか2日後。地元の和光市長選の候補者応援に向かう車内で、運転中の元秘書の左頬に、後部座席から豊田氏のグーパンチが飛んできた。候補者の選挙ビラの準備がないことを怒られた。「痛いより驚いた。キツネにつままれたような感じ」。駐車中にはスマホを投げつけられ、「鉄パイプでお前の頭を砕いてやろうか」とも言われたという。元秘書は防衛策として「録音」を思いつき、同20日からスーツの右ポケットにICレコーダーを忍ばせた。

次のページ