野田聖子(のだ・せいこ)/1960年生まれ。93年の衆院選から8期連続当選。2015年の自民党総裁選に出馬の意欲を見せるも、推薦人が集まらず断念した(撮影/今村拓馬)
野田聖子(のだ・せいこ)/1960年生まれ。93年の衆院選から8期連続当選。2015年の自民党総裁選に出馬の意欲を見せるも、推薦人が集まらず断念した(撮影/今村拓馬)

 東京都議選惨敗後の出直し内閣改造で、首相に批判的な野田聖子氏(56)が総務相、女性活躍相として入閣した。その起用の裏にある思惑とは──。

 内閣支持率の下落に苦しむ安倍晋三首相(62)が助けを求めたのは、当選同期で宿敵の野田聖子氏だった。首相に批判的な野田氏を閣内に取り込めば、これまでの“お友達内閣”のイメージや、安倍一強のカラーを薄めることができる──。挙党一致の演出に余念がない首相にとって、確かにメリットはある。

●次も総裁選に出る

 実は、野田氏にとってももっけの幸いだった。2年前の自民党総裁選で首相の対抗馬として出馬を模索、今年に入ってからは5月に村上誠一郎衆院議員らと「脱アベノミクス」を考える勉強会を結成した。「反安倍」で耳目を引いてきたのに、内閣支持率の下落とともに注目されたのは、外相だった岸田文雄氏の去就、石破茂元幹事長の政権に批判的な発言だった。ポスト安倍レースから脱落しつつあった野田氏が一転、入閣で脚光を浴びた。野田氏は3日、来年秋の自民党総裁選について「次も必ず出るということは申し上げていく」と改めて宣言した。

 野田氏の起用には別の思惑もある。1日、安倍首相は側近議員にこう漏らしたという。

「野田氏を入れざるを得ない」

 政治ジャーナリストの角谷浩一さんは、こう指摘する。

「野田さんを閣内に入れるのは、小池百合子東京都知事を取り込む狙いもあるだろう」

 仮に野田氏を閣僚として起用せず、民進党の分裂や都民ファーストの国政政党化で政局が流動化した場合、どうなるか。糾合する新たな野党の顔に、小池氏に近く、知名度のある野田氏を担ぐ動きになれば、安倍自民党にとって波乱要因となる。

 一方、野田氏が無役のまま党内に残れば、自民党総裁選に野田氏が立候補、その応援に小池氏が駆けつける可能性も。3選を目指す安倍首相にとって大きな脅威になりうるのだ。

「小池氏の議員時代、議員会館の事務所は野田氏と同じフロアにあった。野田氏の部屋の前を通る必要があり、気軽に立ち寄り交流を深めていった。外様の小池氏と県議から上りつめた野田氏は立ち位置も価値観も違うが、女として自民党を生き抜いてきた強いつながりがある」(角谷さん)

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