練習への取り組み方で、自分は「日本人」だと強く感じる(※写真はイメージ)
練習への取り組み方で、自分は「日本人」だと強く感じる(※写真はイメージ)

 独ブンデスリーガのマインツに所属する武藤嘉紀選手が「AERA」で連載する「職業、ブンデスリーガー」をお届けします。大学在籍時からFC東京に所属し、日本代表にも選出。現在はマインツで活躍する武藤選手が異国の地での戦い、生活ぶりをお伝えします。

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 マインツには十数カ国にわたる外国人選手が所属しています。日本のJリーグには、原則として外国籍選手の登録は5人まで、試合出場は3人までという制限があり、世界各国のリーグにも各々、独自の規約があります。

 ブンデスリーガでは、10年ほど前に外国籍枠が廃止され、かわりに「自国の選手を12人以上保有し、そのうち6人は地元で育成した選手を」というルールが設けられました。外国人に対する制限が緩和され、移籍が活発なリーグに変化したのです。

 チームにはアルゼンチン国籍の選手も在籍していますが、ほとんどがEU圏の選手です。ただ、出身地と国籍が異なる選手も当たり前のようにいて、普段、「誰がどの国の出身」と気にされるようなことはありません。

 とはいえ、アジアから来た選手は僕一人。そこで僕自身が「自分は日本人だ」と意識せざるを得ないことは、しばしばあるのです。

 マインツの中には、アジア人選手とチームメートであったり、対戦したりした経験のあるメンバーもいて、特に日本人に関しては、「バカがつくほど真面目で、クレージーなほどに練習をする」というイメージを持たれているようです。

 確かに僕も、腹筋トレが10本行われる時にはそれを15本に増やしたり、全体練習のあとに必ず走ったり、「今、自分に足りないもの」を考え、調整に努めています。練習から出し惜しみすることなく、常に100パーセント以上の力で臨むことも心掛けています。日本では、その姿勢はプロとして当然だと捉えられますが、ドイツではそうではない時もあるような……。

 反対に「なぜそんなに練習をしているんだ?」「早く家に帰れ」と言われることもあり、何より「効率よく結果を出すこと」が求められるのでしょう。そこに考え方の違いを感じます。

 もちろん1日2時間の練習だけで結果が出せれば一番いいのですが、日本人の僕にとって、そうはうまくいきません。自分が成長するために考え、努力する、そのサイクルを崩すことは今後もないでしょう。

AERA 2017年8月7日号