上大岡B地区では、地権者と横浜市住宅供給公社が市街地再開発組合を結成して事業を進めた。新築された超高層ビルの5階以上は横浜市住宅供給公社が持って、横浜ヘリオスタワーとの名称で新規分譲した。

 と、ここまではよくあるパターンだ。しかし、「マンションの憲法」といわれる「管理規約」にはすでに、管理者に上大岡都市開発の名が書き込まれていたのだ。ふつうの新築マンションは、まず管理組合の設立総会を開き、理事長ら役員を選出して管理規約を議決する。管理者は理事長が兼務し、具体的な管理業務が管理会社に委ねられる。

 ところが、こうした手続きを経ることなく、管理組合は発足し、管理規約も作られていた。しかも管理組合の議決権は、店舗や事務所の施設側が55%、307戸が入る住宅側は45%とされていた。区分所有法には「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による」と定められている。圧倒的に床面積が広い住宅側の議決権が半分以下というのは信じ難い。

●タワマンの管理組合同士 横のつながりが必要

 分譲した横浜市住宅供給公社に疑問をぶつけると「都市再開発法で、(先に開発主体が管理規約を定めるのは)認められています」と返ってきた。住宅部会の山根たちは、偏った管理規約に憤り、4回目の住民総会で上大岡都市開発から日本ハウズイングに管理業務の委託先を変えた。横浜市の公社に管理規約の不備を問い質したが、明確な回答は得られていないという。

 低層と上階を切り離した大規模修繕の背景には、このような再開発事業特有の既得権を重んじる経緯が横たわっていたのである。

 超高層マンションは全国で優に1300棟を超えた。駅前の再開発事業で建設され、低層に商業施設が入るタワーマンションは枚挙にいとまがない。横浜ヘリオスで露呈した矛盾は氷山の一角ではないのか。NPOかながわマンション管理センター理事長・松野輝一は、こう指摘する。

「住民が区分所有者として目覚めなければ、自分の財産を守れません。タワーマンションの管理組合同士の横のつながりが必要です。互いの管理規約を突き合わせただけでも、それぞれの特殊性が浮かび上がるでしょう」

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