AIは将来「神」に近い存在になるのか?(※写真はイメージ)
AIは将来「神」に近い存在になるのか?(※写真はイメージ)

 日本人がなじんできた「お葬式のかたち」がいま激変している。従来型のお葬式ではなく、「家族葬」が広く受け入れられ、弔いの形は家から個へ――。葬儀費用の「見える化」と価格破壊は何を生むのか。AERA 8月7日号で、新しい葬式の姿と、大きく影響を受ける仏教寺院のいまを追った。

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 南無妙法蓮華経……というお経と「ポクポクポク」と響く木魚の音。「チャッチャッチャッ」というかけ声と手の動きが特徴的なバリ島の民族舞踊ケチャックダンス。この両方に共通するものは何か。規則的に繰り返される音とリズムの「シンクロ(同期)」だ。

 アンドロイドやロボットを使って人の心の研究に取り組む大阪大学大学院基礎工学研究科特任講師の高橋英之さん(37)による実験で、「音とリズムのシンクロ」が本来はそこにないものが見える「錯覚」を起こしやすくすることがわかってきた。

●神様を感じやすくする

 実験用のパソコン画面には、ロボットハンドと3台の太鼓。ロボットハンドは「ポン、ポン、ポン……」と規則的なリズムで1台の太鼓をたたく。さらにほかの2台の太鼓も、同じリズムでたたいていく。リズムに乗った状態で、2次元バーコードのようにランダムなドットが集まった絵を見ていると、そこに人や動物が浮き上がってくる、というのだ。

 調べてみると、この実験中に活発に動いていた脳の部位には、実際に何かを見ているときに活動が活発化する視覚野が含まれていた。

 高橋さんは言う。

「なぜそうなるのか、仕組みはわかっていませんが、リズムがシンクロすることで錯覚が起きやすくなり、脳も人や動物の絵を見たと認識しているのです」

 お経を唱えて木魚をたたくのも、もともとは死者の霊を呼び出すための宗教的儀式だったケチャックダンスも、錯覚の効果を利用していたのではないか。

 だから、高橋さんは一歩進んでこんな仮説も立てている。

「コンピューターを使って音とリズムのシンクロ状態を作り出すと、『神様』の存在を感じやすくすることができるのではないか、と思っています」

 宗教の成立過程でも、意識的にシンクロ状態を作り出し繰り返し錯覚させることで「神様」を感じさせていたのではないか、と高橋さんは考えている。

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