●大学中退は高卒以下

「企業が入社後もきちんと職業教育をするなら奨学金を背負ってまで進学する必要はないが、現実はどうか。高卒と大卒の賃金格差も拡大しており、慎重に考える必要はある」(大内教授)

 高卒求人にシフトする企業には、いわゆる「ブラック企業」も少なくない。前出の新留代表取締役も「会社が社員を育てる風土を持っているかが一番重要だ」とし、こう続けた。

「16年3月から企業には求人票に、直近3事業年度の離職者数や平均勤続年数などの情報の記載も義務付けられている。安易に高卒採用に走る企業もあるが、『定着』を意識する企業が高卒採用に成功している」

 駐車場の運営などを行う日本駐車場開発(大阪市)は今春入社の高卒社員から、大学進学を支援する給付型奨学金制度を導入した。入社後3年間、一定水準の評価を得た大学進学希望者に対し、入学金と3年間の授業料を給付する。橋本奈津子人事総務部長は、こう話す。

「年齢、性別、国籍、学歴は関係ないというのが当社の考え方だが、経済的な理由で勉強する機会が奪われたケースもある。機会を提供することで、幅広く人材を採用する狙いもある」

 安易な就職は避けたいが、それは進学も同じこと。労働政策研究・研修機構が東京都在住の20代を対象にした調査によれば、大学中退者(専門学校含む)の就職状況は「一貫して非正規雇用」が最多の約5割だ。

「現在でも一度就職して学費をため、進学する生徒はいる。働いてみて、初めて自分の求めることがわかることもある」

 都立第四商業高校の高石公一校長は、そんな生き方も提案した。

(編集部・澤田晃宏)

AERA 2017年8月7日