鈴木貴博(すずき・たかひろ)/1962年、愛知県生まれ。ボストンコンサルティンググループ等を経て2003年に独立。専門は大企業の競争戦略(写真:本人提供)
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鈴木貴博(すずき・たかひろ)/1962年、愛知県生まれ。ボストンコンサルティンググループ等を経て2003年に独立。専門は大企業の競争戦略(写真:本人提供)

「趣味は何ですか?」。会話の糸口に聞かれることは多いもの。だが、これといって趣味がないと、この質問はプレッシャーだ。SNSにはリア充趣味に興じる様子がてんこ盛り。趣味界は、なんだかんだと悩ましい。インスタ映えを重視して「趣味偽装」する人、趣味仲間から抜けられずに苦しむ人もいるらしい。AERA 7月31日号ではそんな「趣味圧」の正体を探る。

 本格的なAI時代に突入すると、「趣味」の時間が非常に重要になってくるらしい。経営戦略コンサルタント・鈴木貴博さんが、「趣味」を持つことの重要性を語った。

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 人工知能(AI)の開発は2012年を境に新たな段階に入りました。与えられた情報を記憶するだけだったのが、自ら学ぶ「ディープラーニング」が可能となり、囲碁で人間に勝利し、車の自動運転も実用化に向かっている。このペースでいけば2045年ごろにはほとんどの仕事はAIに置き換えられ、人は働かなくてよくなるでしょう。

 職場はなくなり、膨大な自由時間を得たとき、人は何によって人生の充実感を得るのか? AI時代では「趣味」がより重要になってくるのです。

 似たような時代は、実は過去にもありました。古代ローマです。帝国の最盛期には食料などの必要な物資は植民地から得られ、労働は奴隷たちが担った。時間を持て余すローマ市民への政策として、皇帝はコロッセオや大浴場などの娯楽施設をつくったのです。

 見方を変えるならば、現在、定年後の趣味の問題に直面している団塊の世代は自由時間時代の先駆けともいえます。このような時代のロールモデルは「趣味人のタモリさん」です。音楽、鉄道、料理など多彩な趣味を持ち、無理なく自然体で取り組んでいる。

 趣味を持つことの難しさが言われますが、「趣味とはこういうもの」という固定観念に縛られているからではないでしょうか。私は海を眺めるのが好きで、何時間でも眺めていられる。苦なくでき、結果的に時間が過ぎているようなものが趣味なのだと思います。いま多くの人が、時間を忘れ、至る所でスマホを眺め続けています。趣味の8~9割はスマホのなかに入っているとも言えます。

(構成/編集部・石田かおる)

AERA 2017年7月31日