──一方で、アマゾンを「秘密主義」だと感じる消費者も少なくありません。サービスはどこか一方的、機械的な感じで「顔」が見えない、と。

 われわれは秘密主義ではありません。お客さま、パートナーのみなさまに正しく、有益な情報を提供することを重視しています。逆に無用な情報で邪魔をしたり影響を与えたりはしたくない。選択的に動いています。

 利便性、信頼性向上のために、われわれは本当にがんばって価格情報や他社さまの情報も出しています。加盟店の業績、配送状況、返品方法などは詳細にウェブサイトに掲載して、誰でも確認できる。購入の経験が透明性のあるものになるように担保しています。

 新しい商品、サービスを事前に発表しないのは、準備が整ってからお客さまに伝えるというスタンスだからです。実際にやらないかもしれないことをすべて伝えると、無用な情報になってしまいます。

──日本ではプライムの会員数も非公表です。これも無用な情報ということになりますか。

 注目していただくほど重要な情報ではないと思います。それより、年に3900円、月に400円で何ができるのか、というプログラムの中身をお伝えするほうが重要でしょう。私自身、他に会員が何人いるかより、プログラムのことを知りたいと思っています。

●便利が時間を生んだ

──アマゾンのおかげで、いろんなことが便利になりました。便利すぎる世の中になることに対する、不安や恐れはありませんか。

 私自身、10年前より確実に買い物がしやすくなり、エンターテインメントコンテンツが消費しやすくなりました。それによって、いままでできなかったことも、できるようになりました。新しい趣味を始められたり、家族との時間が多く取れるようになったり。これは感謝すべきことです。

 われわれがやるべきことは、お客さまのしたいことがやりやすい環境をつくること。それで、新たな時間も生まれます。今後も、そのような機会を提供したいと思っています。

(構成/編集部・作田裕史)

AERA 2017年7月24日号