日本でも翻訳が評判の『Hillbilly Elegy: A Memoir of a Family and Culture in Crisis』(邦題は『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』光文社)を持って、10人ほどが並ぶレジへ。正札は27.99ドルだが、筆者はプライム会員なので12.59ドル。店員が寄ってきて、並んでいる間にレジのそばにあるQRコードをスキャンすると、アプリに登録したクレジットカードで買えることを並んでいる人たちに教えてくれた。

●オンラインの延長上に

 ほぼ全員がアプリを持っていて、レジに行くと、スマホに表示される本人であることを示すQRコードをレジ係がスキャン。これで、買い物は終わりだ。現金やクレジットカードを出す面倒もなく、あっという間。商品とスマホさえ持っていけば、買えるということだ。

 アマゾンブックスでは、アマゾン登録会員あるいはプライム会員が実物を確かめてから、すでに持っているアプリであっという間に買い物ができる。つまり、オンラインショッピングの延長として実物を見てから買う、という体験を実現しているのだ。買ったものが重ければ、レジで配達を選ぶこともできる。

 ここにある本は約3千タイトル。スマホで表紙をスキャンしやすいように、平積みか、表紙を前にして本棚に立てて並べてある。背表紙しか見えない本はない。本の並びは、オンラインで見慣れた「この商品を買った人はこんな商品も買っています」という推薦機能を使っていて、店には「もし、これが好きなら、→これも大好きでしょう」という表示がある。

 アマゾンプライム会員以外の来店客にはスキャナーが配置され、裏表紙にあるバーコードをかざすと正札とプライム会員価格が表示される。たくさん買う人には、プライム会員になると得になることが一目瞭然だ。

 これを地方で展開するのは難しいかもしれない。しかし、ある程度所得があり、アマゾンを使いこなしている人が多い大都市では、「新鮮な買い物体験」として受け入れられるだろう。

(ジャーナリスト・津山恵子)

AERA 2017年7月24日号