そんな中、日本語だけで常時口座開設が可能な日系銀行が海外に初めて誕生したことになる。16年に口座開設したという60歳代男性は、「すべて日本語での対応でした。航空券やホテルの手配も可能。プライベートバンキングのコンシェルジェ並み、とはいきませんが、自分の運用目的に適した資産構成(ポートフォリオ)を組んでもらい、様々なアドバイスを受けました」と言い、満足したようだ。

●7月3日からスタート

 さらに「最低預入金額」と投資運用の両面で従来にない試みもこの7月3日から始まった。サービス名は「eNWB」。「e」はeveryoneで誰でも投資できるという意味。口座開設と同時に開設する「Settlement Account(決済口座)」で、海外ファンドへの投資が可能となる。それも口座開設に必要な最低預入金額は1千米ドル(約11万円)。これなら富裕層でなくても検討でき、投資運用先も広がる。世界3大金融センターの一角の香港ゆえ、扱う投信は世界中のあらゆる商品をそろえているからだ。

 どんな投信があるのか。ざっとみても、過去5年の運用成績(年率換算)で10%以上の運用益を上げている商品も数多い。債券投資ファンドの中にも「年率換算9%」という商品もある。

 一方で、注意点もある。口座開設のため1度は香港に行って手続きが必要なのと、例えば投信の管理手数料や送金手数料も発生する。また、為替変動や現金化の流動性リスクも、検討する際には考慮すべきだ。

 ただ、これまで日本の投資家は「最高値で買って、最安値で売る」と揶揄されてきた。投信でも同じような投資行動を強いられ、一つの投信がヒットすると、二匹目のドジョウを狙ったファンドが山のように続く。

 資産防衛で忘れてはならないのは、最低でも5年以上の長期的な視野で利益を目指すという「長期投資」の視点。リスクを踏まえつつ、これまで難しかった「国際標準の投資信託」への投資も選択肢とする価値は十分ある。“投資難民”と言われ続けてきた日本の投資家にとっては、朗報になるかもしれない。

(経済ジャーナリスト・岩崎博充)

AERA 2017年7月17日号