「フェイクニュースの背景はとても複雑です。ファクトチェックは重要だが、それだけで対応できるものではない。フェイクニュースが生まれ拡散される背景のひとつに、政治的な分断の深まりがある。こうした分断の解消に向けた対策が必要でしょう」

 実際、アメリカではここ数年で政治的分断が深まっている。米国の調査団体であるピュー・リサーチ・センターが20年以上にわたり毎年調査をしているアメリカ人の支持政党調査結果からは、ここ10年で共和党支持層と民主党支持層では、政治イシューに対する意見の分断が徐々に進んでいっていることがわかっている。

 そもそも何をフェイクニュースとするかの判断は難しい。ある人にとっての「事実」は意見が対立する他の人にとっての「偽」になりうるからだ。人々の政治的な分断が深まることで、こうした意見の対立が増え、フェイクニュースの発生と拡散につながっているのが現状だ。

 昨年夏、スマートニュースは同社のニュースアプリの北米版に、保守の人にもリベラルの人にも双方のニュースを配信するといった、政治的にバランスよくニュースを配信するアルゴリズムを導入した。アメリカでの政治的分断を肌身に感じていた、現地の中国人エンジニアからの提案に基づいて実装した。

 一般にニュースアプリや検索、SNSでは多くが利用者の好みに最適化するアルゴリズムに基づいて、ニュースや検索結果などが表示される。こうしたアルゴリズムが情報のタコツボ化を促し人々の分断を加速したという指摘もある。

●興味や関心を広げるアルゴリズム

 スマートニュースのアルゴリズム変更は、こうした指摘への対応のひとつとも言える。実際、配信されるニュースの政治的バランスはよくなったという。

 だが、前出の鳥海准教授が指摘するように、もともと人は自分と異なる意見を信じにくい。そのため、政治的な分断などの意見の相違が強いほど、自分と異なる意見を知ったとしても共感にはつながりにくい。

 では、フェイクニュースの原動力ともなっている人々の分断の解消に、テクノロジーはどのように対応していけるのだろうか。

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