14年ぶりに日本選手権で短距離の2種目を制したサニブラウン。将来の目標として「9秒58」の世界記録更新も公言している (c)朝日新聞社
14年ぶりに日本選手権で短距離の2種目を制したサニブラウン。将来の目標として「9秒58」の世界記録更新も公言している (c)朝日新聞社

 日本男子短距離界に新風が吹いている。8月4日にロンドンで開幕する世界陸上に向けて注目を集めるのがサニブラウン・アブデルハキーム(東京陸協)だ。

 6月に大阪で行われた陸上の日本選手権。男子100メートルと200メートルの両方を制したのは、18歳のルーキー、サニブラウンだった。

 10秒0台の選手が5人も揃った100メートルでは、大会直前まで「5番手の大穴」と見られていた。しかし、予選と準決勝で自己ベストの10秒06を連発すると、決勝ではそれを上回る大会タイ記録の10秒05をマーク。急成長の多田修平(関学大)、昨年リオ五輪で銀メダルに輝いた、400メートルリレーメンバーの3人(山縣亮太=セイコー、桐生祥秀=東洋大、ケンブリッジ飛鳥=ナイキ)が揃った大激戦を制すと、続く200メートルでも決勝で自己記録を0秒02更新する20秒32で2冠に輝いた。

●拠点をオランダに

「正直、驚きましたが、まだ先がある。そこで結果が出せなければ意味がないし、世界陸上では100メートルと200メートルの両方であわよくば決勝に行きたい」

 本人にとって日本選手権はあくまで通過点との位置づけ。勝負は世界陸上と意気込む。

 ガーナ人の父と日本人の母の間に生まれたサニブラウンの名が世に知られたのは、2015年のこと。7月に世界ユース選手権(18歳未満の大会)で100メートルと200メートルでともに大会新記録で優勝すると、翌8月の世界陸上(北京)では史上最年少の16歳で200メートルで準決勝に進出する堂々の走りを見せた。一方、リオ五輪を目指した16年は一転、左太ももの故障に悩まされ、長くレースから遠ざかった。だが、いまとなっては「そのケガで学んだことは多かった」と振り返る。

 9月にはスポーツの名門、米国フロリダ大学への進学が決まっているが、今春都内の高校を卒業後は、拠点をオランダに移し、南アフリカや米国でも合宿を行ってきた。海外のトップ選手が集まるチームでともに練習することで、走りの技術を一から学び直しているという。

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