債券市場で奇妙なことが起きている (※写真はイメージ)
債券市場で奇妙なことが起きている (※写真はイメージ)

 経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。

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 債券市場で奇妙なことが起きている。新発10年物国債の取り引きが成立しない。何日にもわたって利回りが変わらない。これでは、もはや、市場ではない。

 取り引きが活発で、取り引き対象の値段がくるくるコロコロと変動する。それが市場だ。債券市場であろうと、何市場であろうと、同じことである。築地市場も、商い閑散なら値動きは小さい。商い不成立なら、市場の体をなさない。

 債券市場はなぜ、商い閑散なのか。それは日本銀行のせいである。日銀は10年物国債の利回りをゼロ%程度に誘導するという「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」をやっている。中央銀行が政策的な金利誘導水準を明示し、それを達成すべく、大量の国債買い入れを連綿と続けている。こんな状態の中で、市場が盛り上がるわけがない。

 最も威勢がいいはずの株式市場でも、いまや“官製相場”状態がすっかり支配してしまっている。日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がビッグプレーヤーとして存在感を強め過ぎている。管理された株式市場。これは定義矛盾だ。

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浜矩子

浜矩子

浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演

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