「建物をきょうだいや親戚で共同相続してしまうと、売却などの手続きに手間取ることになる。きょうだいがいる場合は、1人に譲ると遺言に書いてもらう。おじ、おばなどの親戚に子どもがいない場合は、親戚の中から誰か1人託す人を選んでもらうことが重要です」(川弁護士)

 当事者が亡くなってから効力を発揮する遺言に加えて、「認知症になるなどして意思表示ができなくなる可能性も考えて、信頼できる家族に資産の管理を託す『家族信託』をするほうがいい」とアドバイスするのは坂部達夫税理士(61)。

「亡くなってから対処したのでは手遅れの場合も多い。そうなる前にしっかり考える機会を持たなければ」

 と訴える。

 たとえば高齢の父親が、自分の持つ不動産の維持・管理・処分を長男に委託する契約を生前に結ぶ。長男はその契約に従って、不動産を貸し出したり、譲渡・売却したりする。不動産の活用に積極的になれる若い世代に管理を任せれば、処分は進みやすい。

 税制面で見ると、特定空き家が増税対象になる一方、16年4月以降、空き家の譲渡所得から条件を満たせば3千万円の特別控除が受けられるようになった。

「持っている空き家が悪い状態になれば増税、流通させたり有効活用したりすれば課税の緩和という方向になっています」(坂部税理士)

●遊休地活用に本腰

 政府は、空き家以外でもさまざまな遊休地の活用を促そうとしている。国土交通省は空き地の有効活用の検討を進めている。今年1月から「空き地等の新たな活用に関する検討会」を開催してきた。6月末にとりまとめを発表するという。今後は空き地を放置した場合も、適切な管理を求められる可能性が出てきた。

 6月9日の閣議では、シャッター通り解消のため、空き店舗への課税強化も打ち出した。人が住む店舗は税制上住宅扱いになり、固定資産税が最大6分の1になっているが、空き店舗はこの特例対象から外すことを検討している。

 気づいたら増税されていたという事態は避けたいところ。放置して荒れさせる前に、早め早めの対策が重要だ。(編集部・山口亮子)