「アウトロー採用」のワークショップで。若者50人が小グループに分かれ、働くことの意味についてディスカッション/東京・京橋のイトーキ東京イノベーションセンターSYNQAで(撮影/編集部・石臥薫子)
「アウトロー採用」のワークショップで。若者50人が小グループに分かれ、働くことの意味についてディスカッション/東京・京橋のイトーキ東京イノベーションセンターSYNQAで(撮影/編集部・石臥薫子)

 売り手市場が続く就職戦線。就活中の大学4年生の6割超が、すでに希望企業の内定を得ているとされる。注目すべきは、「脱・面接」の動きが出始めていることだ。

「広報の仕事を始めて、ギャップを感じたことはありますか」

「一人の人間として、実現したい夢や目標はありますか」

 人材サービス会社、ビースタイルの会議室で、インタビューが始まった。メモを片手に質問をするのは、企業ではなく学生。早稲田大学4年の女子学生がストレートな問いをぶつけると、同社の社員で広報を担当する柴田菜々子さんが、ときに戸惑いつつ懸命に答える。

●10人集めて10人採用

 同社は、3年前に面接を廃止。代わりに、通常で1カ月、場合によっては半年かかるという新たな採用プロセスを導入した。今年度は、学生が社員2人以上にインタビューを実施し、その内容をもとに同社の魅力をまとめる「課題制作」が第1段階。その後、社内のランチ会や飲み会、インターンシップなどに参加して、社員との相互理解を深めていく。

「お祈りメール(不採用通知)」も出さない。最終選考までは次のプロセスに進むか否かを決めるのは学生で、最終選考で不採用だった場合は再チャレンジも可能だ。だから、学生は安心して素の自分を見せるという。

 ビースタイルがこんな面倒な方法で採用活動をするのは、「自己PR」や「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」「志望動機」など、企業が繰り返すお決まりの質問に、準備してきた答えを返すだけの面接には意味がないと判断したからだ。

「面接という非日常の環境で、適度にコミュニケーション能力や個性をアピールできる『面接番長』みたいな人が、実は入社してみると大したことなかった、というケースもある。逆に、コミュ力があまり高くないというだけで、将来活躍してくれるであろう有能な人材を見落としてしまうリスクも大きいと考えました」(柴田さん)

 面接を廃止して3年。「とりあえずエントリー」型の学生は来なくなり、情報感度が高く、従来方式の面接なら2次、3次に残るような学生ばかりが最初から集まるようになった。リクナビやマイナビなど、大手ナビサイトへの掲載も取りやめた。

「たくさん集めてたくさん落とすより、優秀で志望度も高い学生が10人集まってきて、その10人を採用するほうが効率的」

 と柴田さんは言う。

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