川島は、シリア戦の後、UAE戦に臨んだ時の心境をこう振り返った。

「自分としては、クラブで試合に出ていなくても代表に来ればこれまでと一緒で、日本が勝つために自分がやれることの最善を尽くすことだけを考えていました。葛藤はありましたが、試合に出ていないなかでもやれることはやってきましたし、いつも通り臨んだだけ。もちろん、W杯出場をかけた大事な一戦で(クラブで)試合に出ていない選手を使うのは、監督としても勇気が必要な決断だったはずですし、その期待を裏切れないという気持ちもありました」

 強調するのは、それまでやってきたことを貫いただけだということである。

「UAE戦のために特別な何かをやってきたわけではないです。クラブでポジションを勝ち取るために毎日ただ必死にやっていただけ。結局は日々の積み重ねが、あのパフォーマンスにつながったんだと思います」

 GKはポジション柄、積極的なアピールが難しい。だが川島は、どんな状態になろうとこれまで貫き通してきたことをやり切ったことで土壇場で見事なV字回復を果たした。ただ、これで満足するつもりはない。

「今回はうまくいきましたが、サッカーに終わりはありません。これからもたとえ試合に出られなくても練習から一つ一つのプレーに集中し、ハードワークし、自分自身で努力するだけ。これまでも自分が信じる道を進んできましたし、結局は、誰かが自分の状況を変えてくれるわけではないですから」

(スポーツジャーナリスト・栗原正夫)

AERA 2017年7月3日号