●攻めの経営で顧客開拓

 園田の場合、12年にナイター照明設備を竣工、さらに13年から順次、広島県内3カ所、和歌山県、香川県、大阪市各1カ所に場外発売所を新規開設、攻めの経営を強めてきた。

「園田は住宅街が近いため、近隣との協議でナイター開催は週1回に限るという申し合わせになりました。実はJRAのネット投票システムは中央競馬の開催前日と翌日、つまり金曜日と月曜日はメンテナンスにあてるため、動かせない。売り上げのことだけ考えれば金曜開催は避けるべきかもしれないが、水曜木曜を昼間開催、週末の金曜をナイター開催する混合スタイルを取り入れ、結果的に新たな顧客層開拓につながりました」(米澤さん)

 園田を上回る、ピーク時の売り上げを超えるV字回復を達成したのが高知競馬(高知県競馬組合)だ。91年度のピーク時の約220億円から08年度には約38億円まで落ち込んだが、09年7月から始めた「夜(よ)さ恋(こい)ナイター」を足がかりにV字を描き始め、昨年度ついに約253億円と過去最高を更新した。高知競馬ではバブル崩壊後の98年にデビューした牝馬「ハルウララ」があまりに連敗を続けることから03年に人気になり、単勝馬券が「当たらないから交通安全のお守りになる」など社会現象にまでなった。そこから売り上げが底を突き、廃止寸前から奇跡の回復を成し遂げただけに、浮ついたところが全くない。14年度からは冬季の平日にナイターを開催するというネット販売に特化した戦略を展開している。

「ファンの支えや新たな法律や補助金支給など、いろんな要因でここまで生き延びられた。そういう中でネット販売も加わって、今はいい方向に転がっています。一方で、外から見るとV字回復でしょうが収益構造が以前と異なり、ネット販売は委託料がかなりの割合を占めるので、実は大して儲かっていません」

●極論すれば無観客でも

 高知県競馬組合の担当者はしかし、こう続けた。

次のページ