「インターネット投票のシステムがJRA(日本中央競馬会)と連動してネット売り上げが全国に広がったことと、金曜ナイターの開始でサラリーマンや若者など新たな顧客層が本場に足を運んでくれるようになったことでしょう」

 震災のあった11年は、地方競馬界にとってコペルニクス的転回の始まりだった。北海道から九州まで、それまで各々の主催者ごとにやっていたオッズ計算などのデータ管理を、共同トータリゼータシステム(共同TZS)を導入することで一元化。そこに翌年JRA在宅投票システム「I-PAT」を繋げることでネット発売が飛躍的に伸びた。それまでも90年代後半に始まった南関東4場によるSPAT4やD-net(現オッズパーク)、楽天競馬など地方競馬専用のネット投票システムはあったが、JRAと連動することで相乗効果を生み出したのだ。地方競馬全国協会(NAR)によれば、16年度は全国14競馬場による総売り上げが前年比113%増と5年連続で前年を上回った。内訳は本場が96.8%とやや落としているのに対し、ネットを含む場外・電話投票が124%(うちJRAネット投票は141.5%)と一目瞭然だ。

●地方で戦災復興支える

 戦後の1948年、新たに制定された競馬法で国営(現在の中央)競馬とともに体系化された地方競馬は、戦災復興の名のもとに全国に雨後の筍のように増えたが、多くは経営不振のため閉場。その後も定着した地方競馬場はピーク時の91年度には全体で9862億円余を売り上げたが、右肩下がりを続けていた01年から閉場が相次いだ。大分県中津、新潟県三条、島根県益田、栃木県の足利・宇都宮、山形県上山、群馬県高崎、北海道の北見・岩見沢・旭川、本県荒尾、広島県福山。今も残るのは14の主催者が運営する17競馬場だけだ。この間、競馬法改正に伴い、特殊法人だったNARは08年に地方共同法人に移行、共同TZSを整備し、各場バラバラだった馬券の種類も統一した。

「目の前の存続の危機からは脱し、賞金額も回復はしてきている。しかし、まだ各場とも盤石の経営ではありません。主催者間、あるいはJRAとの連携をさらに深めながら、将来にわたって地方競馬の基盤を強化していきたい」(NAR)

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