「エレクトロニクス事業の構造改革が功を奏する一方、業態がまったく異なる金融事業や映画事業が存在感を増して、収益を支えています」(河合さん)

 つまり「新商品」と「業態転換」が交じったケースといえる。

 法政大学経営大学院教授・米倉誠一郎さんは、経営史が専門。変化の背景を説明してくれた。

●「選択と集中」で回復

「バブル期は多角経営が是とされ、どの会社も手を広げすぎて贅肉がついてしまった。バブル崩壊後、あるいはリーマン・ショック後は、明確なビジョンやコアコンピタンスを見失った企業がこれまでにない視点と合理的判断で贅肉をそぎ落とすというのが、V字回復の成功パターンだったといえます」

 つまり、「選択と集中」。自社の注力分野を明確化し、経営資源を集中投下するこの手法は、1980年代にゼネラル・エレクトリックを業績回復に導いたジャック・ウェルチが実践したことで知られる。

 日本では、バブル崩壊後の90年代半ばから2000年代に注目され、経営改革のテーマとして「選択と集中」を取り入れる企業が増えた。

 注力した分野から新商品や新事業への足がかりが生まれれば、業績回復につながる。つまり、「新商品・新サービス型」。そして近年では、従来の事業とは異なる領域で新商品開発を図るケースが増えてきた。

「今後は異なる業種・業態にチャレンジしないと、容易には回復できないケースが多くなるでしょう。AIやクラウドサービスの進展に伴い、従来型の商品・サービスが価値をなさなくなってくる。自社の技術やリソースを生かしつつ、新分野を開拓する必要が出てきます。富士フイルムが代表的な成功例ですね」(米倉さん)

●M&Aで新分野へ進出

 写真フィルムでトップシェアを誇った富士フイルムは、デジタルカメラの普及により収益力が低下。05年以降、他分野事業への進出に乗り出した。フィルム技術を液晶ディスプレーや医療分野へ転用、さらには化粧品、健康食品事業も展開し、危機からの回復を果たした。

 こうした複合型「業態転換型」はさらに増えるというのが、3人に共通した見方だ。

 市場の変化のスピードは速くなっている。以前なら、一つのヒット商品で数年間、売り上げを維持できたが、商品開発サイクルがどんどん短くなっている昨今は、売り上げを持続できるのは半年から1年ほどだ。自社で一から開発することにこだわるより、すでに技術を持っていたり、商品化直前まで進んでいたりする会社とM&Aや提携などで組むほうがいい場合も少なくないという。友田さんによれば、最近M&Aで成功している企業には、共通点がある。

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