公安当局は共産党員の活動に目を光らせているという。先の閣議決定を根拠にして、共謀罪の捜査対象にされかねないという懸念はあるのか。

●国民の怒りは根深い

 ここまで急いで共謀罪を成立させた背景には、反政府運動の高まりへの危機感がある。安保法制論議で、国会を取り巻く市民運動が盛んになり、SEALDsや「安保関連法に反対するママの会」などのムーブメントも生まれた。政府に目障りな活動を抑えつけるために、特定秘密保護法を作り、通信傍受法の対象範囲を拡大し、共謀罪を強行採決した。そうした流れの中で、共産党を含む平和運動や反原発運動団体を政府が恐れ、共謀罪の捜査対象にしていこうと考える可能性はありえます。しかし、万が一そんなことをしたら、共謀罪の危険性を世間に知らしめるようなものです。

 岐阜県の大垣市では、警察が風力発電への反対運動の関係者を調査して、電力会社に情報提供をしていた。16年の参院選では、大分県別府市で野党候補を支援する労働組合の敷地内に警察の監視カメラが設置されていた。街には防犯カメラがあふれ、「犯罪が減るのなら」と、監視されることに抵抗を感じない市民も少なくないが、息苦しさを感じてからでは手遅れになる。国会閉会後は野党が追及する機会は激減する。共謀罪も加計(かけ)学園問題も、政権は「国民は時がたてば忘れる」と思っている節がある。

 今回は、国民の怒りはそう簡単には収まらないはずです。特に加計(かけ)学園問題のような“不公平な政治”に対しては、日本人は非常に敏感です。安倍晋三首相の「お友達」なら、52年ぶりに獣医学部が創設できて、37億円の土地がタダになり、96億円の補助金が入るのかと。年金記録問題もそうでしたが、この「不公平感」への怒りは、国民に当事者意識がある分、根が深いのです。国会閉会中も多くの地方選挙があります。不公正な政治には声を上げて、追いつめなければなりません。

 本来なら国会質疑によって法案の内実が少しずつ明らかになり、肉付けされていくが、それが不十分に終わった「共謀罪」法。市民の心には、政権への不信が澱(おり)のように残ったままだ。

(構成・編集部/作田裕史)

AERA 2017年7月3日号