野田氏は15年の自民党総裁選に名乗りを上げたが、推薦人20人を確保できず、立候補断念に追い込まれる。安倍総裁の無投票再選となった背景には、政権周辺の露骨な締め付けがあったとされる。

「総裁選は政権与党としてやらなければいけない命題です。自民党国会議員の一人ひとりが大いに反省すべきだと思います」

 当時、派閥の枠を超えて野田氏支援に動いた古賀氏はこう振り返り、声を落とした。

「功名心や上昇志向が先行している議員ばかり。政党政治にとって大切なものが少しずつ失われているように思います」

「安倍一強」のひずみは、自民党内の活力やダイナミズムを失わせているようにも見える。前出の中北教授は、派閥間でしのぎを削る権力闘争が影を潜めたことで、「戦闘能力」のある人材を党内から送り出せなくなっている、とみる。

「党議拘束に従い、同じユニホームを着ていれば通る、というのが今のスタイル。野生のサバンナで食うか食われるかの環境で育った議員は見当たりません。でも政治には、そういう勘や闘争本能は不可欠なのです」

●民進党低迷の弊害

 とはいえ、中北教授は派閥の機能復活に活路を見いだすべきではない、と言う。国民に開かれた政党間競争によって政権選択を図るべきとの理念には、妥当性があると考えるからだ。

「自民党の対抗勢力が育つことを前提に、官邸に権力を集中させる制度設計がなされてきました。民進党が対抗勢力として機能していれば弊害は少なかったと思います」(中北教授)

 民進党の低迷が「安倍一強」の最大要因であると同時に、日本政治の機能不全にもつながっている。では、自民党内の「リベラル保守」の再生は今後見込めるのか。中北教授は悲観的だ。

「コアな理念で固めないといけない傾向が強まっています」

 小選挙区で自民党が民進党を最大のライバルとして対抗していく以上、「非民進党的」なものが自民党内で正統派になるため、必然的に右のラインを固めることになる、というわけだ。

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