「コンビニ百里の道をゆく」は、47歳のローソン社長、竹増貞信さんが、経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづる連載。前回に続きAERA編集長・井原圭子によるインタビューをお届けします。

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──目指すリーダー像を教えてください。

 小売りの世界にはカリスマ経営者がたくさんいます。ファーストリテイリングの柳井正社長、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文前会長など、1店舗から流通チェーンを築き上げた「第1世代」です。第2世代である私が目指すべきは、「衆知を集めた全員経営」だと思っています。オーナーやクルーのみなさん、そして社員。全員の「知」を集めて、団体戦、総力戦に持っていく。そして最後は私が決断して、責任を取る。「知」といっても大げさなものではなく、小さなアイデアや気づきで十分です。誰もが自分の気づきを口にしやすい風土をつくるには、強すぎるリーダーシップは時に邪魔になることがあります。私は、聞き上手で淡々と結果を出すリーダーを目指したい。

──御社でも、個性の強いリーダーが続きました。

 新浪剛史さんの時代は、親会社がダイエーから三菱商事に変わった混乱期。だから、新浪さんはカリスマ性を発揮してドラスティックな改革をした。引き継いだ玉塚元一さんは「キャプテン」として組織を束ね、チームローソンを引っ張ってきた。本当の意味で全員経営ができるかどうか、試されるのはこれからです。衆知を集めて、全員で実行・実践する会社にしたいのです。

──どんな本を読みますか。

 経営者では松下幸之助さんの著作に影響を受けました。人と相対するときは、自分よりも優れた点を見つける。周りに優れた人物を置くことで、自分が何人いても勝てない強いチームを作る。この考え方にはとても共感します。アインシュタインの本もときどき読み返します。相対性理論は難解ですが、社会的、文学的な文章もあり、読み直すたびに発見があります。

──経営者は武将好きの方が多いようですが。

 長期戦、団体戦で勝つという意味で、私が好きなのは徳川家康。自分の死後も250年続く泰平の世をつくり上げた彼は、長生きしたことも含めて、勝ち切った武将ですよね。こう言うと腹黒いみたいですけど(笑)。42年の歴史を持つローソンには、いろんな知見が蓄積されている。それを出し合い、集め、的確な戦略を立てれば、生き残りをかけた「戦」にも必ず勝てると信じています。

AERA 2017年6月26日号

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竹増貞信

竹増貞信

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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