●懐きやすさは遺伝

 では、家畜化が進むこと=フレンドリーになることであり、犬っぽいは今後どんどん増えていくのだろうか?

「人への懐きやすさには、遺伝的な要因が強く働いているようです」

 と、荒堀さん。過去の研究では、もともと人に懐く猫の子どもは、そうでない猫の子どもに比べて、人懐こいという研究結果がある。

 犬でも同様に、人懐こさは遺伝的な影響が強い。たとえば犬のコミュニケーションで特徴的なアイコンタクト。

「多くの動物では、アイコンタクトは敵意や警戒心を呼び起こしますが、犬は人とアイコンタクトをとることで、より親密な関係をつくっています。これはとてもまれなことなんです」

 と、前出の今野さんは話す。

 人とのアイコンタクトの仕方が、犬種によってどう異なるのか調べたところ、遺伝的にオオカミに近いシベリアンハスキーなどの犬種では、ラブラドルレトリバーなど遺伝的にオオカミから遠い犬種と比べて自分から人に対してあまりアイコンタクトをとらなかった。実験では、目の前にある餌にふたをして、近くにいる人に対して犬がアイコンタクトで助けを求めるかどうかを調べた。

 猫でも、こうしたアイコンタクトによる人とのコミュニケーションは知られている。前出の齋藤さんらの研究からは、餌をあげるために「猫を注視するだけ」「名前を呼ぶだけ」「注視しながら名前を呼ぶ」の三つのパターンで注意を引くと、注視しながら名前を呼ぶ人のところへ行くことがわかった。

 もうひとつ、フレンドリーさのカギを握るのが、「オキシトシン」と呼ばれるホルモンだ。

 出産や母乳を出すのにかかわるホルモンだが、親子関係を認識したり、人間同士の信頼関係に関わったりしている。

「犬でおもしろいのが、オキシトシンが人と仲良くなるのに働いているということです」

 と今野さん。

 ここで気になるのは、「猫にも人との関係構築に、オキシトシンが役立っているのか」だろう。前出の荒堀さんは、猫のオキシトシンに関連する遺伝子の個体差と、猫の人とのコミュニケーション行動の関連を調べているが、残念ながら現段階では明らかになっていないという。

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