とはいえ、ペットフード協会の調査(2016年)では、飼いの入手先として回答者の約4割が「野良猫を拾った」としており、まだ繁殖コントロールはその途上にあるようだ。ちなみに同調査では、飼い犬の入手先として「野良犬を拾った」と回答したのは、わずか2.5%。飼い犬の多くは、人工的な繁殖で生まれていることがわかる。

 そもそも家畜化とは、どのように進んでいくか。家畜化の先輩である犬を見ていこう。
早かった犬の家畜化

 人類の最古の友とも言われる犬。約1万5千年前に、オオカミの中で人になれやすい個体が、人と一緒に暮らすようになり、種として分かれて犬になったと考えられている。オオカミと犬では遺伝的な特徴が明確に異なるが、これは人になれやすい個体同士が交配を繰り返すなどして、自然に作り出された「自然選択」の結果だ。

 だが、この段階ではまだ完全に伴侶として最良の動物とはいえない。

「家畜化が急速に進んだのは、実は比較的最近のことなんです」

 と話すのは、犬と人とのコミュニケーションの研究をする帝京科学大学講師の今野晃嗣さんだ。

 家畜化には、オオカミから犬になった時に起こった遺伝的な自然選択と、もう一つ、人の手による品種改良で犬種が作り出される「人為選択」の2段階のステップがある。犬の人為選択が進んだのは、近世ヨーロッパで犬種を管理する団体ができて、計画的な育種が行われるようになった、ここ300年ほどの出来事なのだという。

 一方の猫では、家畜化の第1ステップが起こったのは、約1万年前。遺伝子解析の研究から、猫の発祥は中東で、祖先種であるリビアヤマネコから現代のイエネコに連なる種が現れたと考えられている。

 当時は農耕が始まったばかり。穀物倉庫を荒らすネズミを捕食するために人里に近づいてきたリビアヤマネコが人になれるようになり、猫という種に分かれた。ところが、犬と決定的に違うのは、人と暮らすようになっても、猫は長く半野生のような生活が続いたことだ。

「猫に、犬のように『品種』が生まれたのはごく最近です。犬と比べて、とても緩やかなのが猫の家畜化です」

 と、人と猫の関係を遺伝子から調べている京都大学大学院博士課程の荒堀みのりさんは言う。

 もっとも、繁殖がコントロールされる人為選択がなく、保護猫や野良猫を拾って育てるとしても、人に懐きやすい猫が飼い猫になる傾向があるため、ここで自然選択が起こり、緩やかな家畜化が徐々に進んでいるとは言えるのだそうだ。

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