さらに、は知らない人に対して警戒するが、飼い主には無警戒にもかかわらず、飼い主が撫でたときのほうが、見知らぬ人のときよりも噛み付いたり睨んだり耳を立てたり、ネガティブな反応をすることが多いという研究結果もある。

「猫は冷たい態度を取りながら実は信頼しているという、ツンデレだといえるでしょう」

 と齋藤さん。自身も猫を飼っている愛猫家だ。

●家畜化の度合いが違う

 人に媚びない、そっけないという、一見マイペースな振る舞いが魅力の猫。この猫が、あたかも犬のようにあからさまに人に懐く振る舞いをするようになる「犬化」は、実際に進んでいるのだろうか?

「そういえば、うちの猫は犬みたいという話は、最近、猫の飼い主の間でよく聞くようになりましたね」

 仮説だが、と前置きして、齋藤さんはこう続ける。

「もしかしたら、飼い猫の不妊・去勢処置が浸透してきて、猫の家畜化が進んでいる影響があるのかもしれません」

 家畜化とはどういうことか。

 犬と猫は人と一緒に暮らす「伴侶動物」だが、実は、この二者には大きな違いがある。それが「家畜化の度合い」だ。繁殖コントロールされることで遺伝的な傾向が人によって左右され、より人にとって扱いやすい家畜化が進む。飼い犬の多くがペットショップなどで購入され、さまざまな犬種が確立していることは、家畜化が進んでいることと同義だ。

●野生の血のなせる技が

 一方、猫は犬と比べると自由に交配をして繁殖するため、犬ほど家畜化は進んでいない。猫の繁殖の97%が、人のコントロール下ではないという報告もある。猫が一見自由気ままで人に媚びないのは、人工的な繁殖がされずに「野生の血」が残っているからといえそうだ。

 そこで、問題の「犬化」だ。家畜化が進むことで、従来犬のものと思われていた性質を持つ猫は確かに増えつつあるらしい。

「ここ最近で野良猫の保護が進み、飼い主による繁殖管理もますます進むでしょうから、そのスピードは増していくのではないでしょうか」

 と齋藤さんは推測する

 猫の不妊手術や去勢手術の実施率の推移グラフを見ると、複数のアンケートをもとにしているため一概に比較はできないものの、ここ数年は8割近くが飼い猫の不妊や去勢をしていることがわかる。

次のページ