●震災契機に寄付意識向上 国庫に入るよりは遺贈を

 財団担当者によると、相談件数の増加の背景には、様々な形の寄付に対する日本人の意識の向上があるという。きっかけとなったのは11年3月に起きた東日本大震災だ。日本ファンドレイジング協会の統計によれば、10年までは年間で6千億円にとどかなかった個人寄付推計総額が、11年には一気に1兆円を超えた。その後はいったんは下がったものの、それでも7千億円前後で推移している。年間27兆円以上の米国、約1兆8100億円の英国(いずれも14年)と比べれば大きな額ではないが、大震災が日本人の寄付意識の大きな転機となったのは間違いないという。

 そこに終活ブームが重なり、自身や家族の遺産の一部を社会に還元したいと考える人が出てきた。また、独り暮らしの高齢者の増加も遺贈への関心を高める要因の一つになっている。

 5年ごとに国勢調査を分析して生涯未婚率を割り出している国立社会保障・人口問題研究所の最新調査によると、15年段階で男性は4人に1人、女性は7人に1人が、50歳まで一度も結婚したことがなかった。男女ともに過去最高の割合だ。独居状態にある高齢者が死亡した場合、子どもなどの法定相続人がいるかどうかの調査が行われるが、いない場合は、その故人の遺産は国庫に納められる。国に没収されるくらいなら、その使い道を生前に記して遺贈するほうが有益だと考える人が出てきている。

 日本財団が昨年3月、インターネットを使って日本全国の40歳以上の2521人(男性1252人、女性1269人)を対象に行った死生観に関する調査では、35.2%が「家族の世話になりたくない。早めに準備をしておきたい」と回答。また、30.9%が遺贈に前向きだった。独身男性は36.9%が、独身女性は50.6%が遺贈に関心を示し、家族がいる人よりも独身者のほうが遺贈への理解度が高かった。一方で、自身の親などが財産の中から社会貢献団体に遺贈することを尊重するか聞いたところ、47.3%が賛成、52.7%が反対と答え、賛否が分かれた。遺産相続をする立場と、遺産相続を受ける立場では、遺贈に対する意識が異なることが浮き彫りになった。

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